新幹線なのに在来線? JR西日本の不思議路線「博多南線」をご存じか

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博多駅から博多南駅を結ぶ8.5kmの博多南線。新幹線単独駅ではなく、九州新幹線の「本線」として運行されている。いったいなぜだろうか。

新幹線が生んだ新しい町

改札口から新幹線が見える博多南駅。ホームには記念撮影をする家族連れの姿が(画像:若杉優貴)
改札口から新幹線が見える博多南駅。ホームには記念撮影をする家族連れの姿が(画像:若杉優貴)

 新幹線単独駅でありながら在来線扱いの博多南駅。駅舎の規模も小さく、ホームを出ればそこはもう改札口だ。ホームが地上にあり、しかも自動改札機の目の前に山陽新幹線の車両が見えるという状況は少し不思議に感じられてしまう。

 駅舎を出て架道橋を渡ると、ペデストリアンデッキ上に駅前広場が広がる。駅前広場には「那珂川市」と書かれた案内図があった。

 福岡市のベッドタウンであった那珂川町は、博多南線の開通によって人口の増加に拍車がかかった。開通前の1985(昭和60)年に約3万人であった人口は1995(平成7)年に約4万2000人に、2005年に約4万6000人に、そして2015年についに5万人を突破。2018年には市制が施行され「那珂川市」が誕生した。

 わずか8km足らずの路線ではあるものの、那珂川市にとって博多南線は「周辺地域に無くてはならない生活の基盤」(同市資料)なのだ。

 人口の急増とともに、博多南駅の1日の乗降客数も開業当時の約3倍となる約1万5000人(コロナ禍前)にまで増えた。この数値は、福岡都市圏の特急停車駅である

・二日市駅(福岡県筑紫野市)
・鳥栖駅(佐賀県鳥栖市)
・久留米駅(福岡県久留米市)

にも匹敵する。

 特に博多駅ビル・JR博多シティの開業後は利用客増がめざましく、車内でも駅ビルに出店する阪急百貨店や無印良品のショッピングバッグをしばしば見かけた。

 ちなみに、博多南駅のホーム部分などは春日市であるものの、駅の出口は那珂川市側に設置されており、またホームの東側には広大な博多総合車両所が広がっているため、博多南駅から春日市の中心部に行くには少し遠回りとなる。なお、春日市中心部にはJR鹿児島本線と西鉄が駅を設けている。

 かつて田畑も多かったという博多南駅周辺には、現在は多くの分譲マンションが立ち並ぶ。新幹線単独駅の駅前ではあるものの、マンションに加えて徒歩圏に複数の学習塾やダンススクール(福岡では習い事の定番)、居酒屋、地場大手ドラッグストアなどが軒を連ねる光景は、やはり福岡近郊にありがちな在来線駅前ベッドタウンそのものだ。

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