「観光客は自宅に帰れ」 地元住民がプラカードで抗議デモ! スペインの現実は「京都」にも迫るのか? 行き過ぎた“観光公害”を考える
バルセロナは観光業の急成長にともなう住宅市場の歪みに直面し、2028年までに1万戸の民泊施設廃止を決定。観光客と市民の対立が深刻化する中、持続可能な都市づくりを目指すこの規制は、他都市にも影響を与える重要な前例となる。
観光客の浪費と市民の負担

バルセロナ市が民泊を規制する意義は大きく三つある。
ひとつめは、ゆがんだ住宅市場を正常化することだ。観光客向けの短期賃貸は高収益なため、長期賃貸物件の供給を圧迫し、市民の居住権が脅かされている。約1万戸の民泊物件を通常の賃貸市場に戻すことで、特に都心部での供給増加が見込まれ、賃料の適正化が期待されている。確かに、民泊物件は住宅総数の0.77%にすぎないという指摘もあるが、都心部への影響は無視できない。
ふたつめは、都市インフラの持続可能性を確保することだ。オーバーツーリズムの問題は、住民の生活に必要なインフラを圧迫する点にある。例えば、バルセロナ市では観光客の1日当たりの水の消費量が163Lなのに対し、住民は99Lしか使っていない。
このように観光客は膨大な水資源を浪費し、環境にも負荷をかけている。交通インフラも混雑が常態化しており、市当局は観光客の利用を減らすためにGoogleマップから一部のバスルートを削除する対策まで講じている。
三つめは、地域コミュニティーを維持し再生することだ。バルセロナ市では賃貸物件の約80%が最長11か月の短期賃貸として提供されており、長期的な居住を希望する若者たちの選択肢を大きく制限している。地域コミュニティーを守るためにも、民泊の急増は防ぐべきだ。
このように、バルセロナ市の民泊規制は住宅市場の正常化、都市インフラの持続可能性、地域コミュニティーの維持という三つの重要な目的を持った包括的な政策だ。