「観光客は自宅に帰れ」 地元住民がプラカードで抗議デモ! スペインの現実は「京都」にも迫るのか? 行き過ぎた“観光公害”を考える
バルセロナは観光業の急成長にともなう住宅市場の歪みに直面し、2028年までに1万戸の民泊施設廃止を決定。観光客と市民の対立が深刻化する中、持続可能な都市づくりを目指すこの規制は、他都市にも影響を与える重要な前例となる。
外国人リモートワーカーが生む住宅格差

最近、東京では観光客の増加でビジネスホテルの宿泊費が1~2万円と高止まりしているのが問題になっているが、バルセロナ市の状況はさらに深刻だ。観光客向けに収益性の高い民泊や短期レンタルが増えたことで、
「市民向けの賃貸住宅」
が減り、深刻な住宅不足が起きている。観光客向け物件の増加で住宅市場がゆがみ、すでに市民生活に大きな影響を及ぼしている。過去10年で市内は
・賃貸価格:68%増
・住宅購入費:38%増
となった。特に若い世代への負担が大きく、国家統計局(INE)のデータでは、住宅総数約81万戸のうち約8万戸が空き家になっている一方で、適正価格の賃貸住宅は年々アクセスが難しくなっている。
さらに、スペイン政府が産業振興のために始めたデジタルノマドビザも、バルセロナに悪影響を及ぼしている。
デジタルノマドビザとは、リモートワークを行う外国人に対して発行されるビザの一種であり、特定の国に居住しながらオンラインで働くことを許可する制度で、主に観光ビザより長期間滞在できる点が特徴だ。結果、外国人リモートワーカーの増加により、2023年1~9月の外国人による住宅購入件数は全体の
「22%」
を占め、2019年と比べて7ポイント増加した。日本でもオーバーツーリズムは宿泊費の上昇などの問題を引き起こしているが、バルセロナ市では都市の社会基盤そのものを揺るがす深刻な危機に発展している。
こうした危機に対応するため、バルセロナ市は民泊規制、実質的には廃止に踏み切った。この規制は単なる観光抑制策を超え、都市の持続可能性と市民の基本的権利を守るための包括的な政策といえる。