「孤独のグルメ」ファンの矛盾! 全然“孤独”じゃない聖地巡礼、本当にそれでいいのか?
『孤独のグルメ』の人気は、聖地巡礼現象を引き起こし、地域の交通やモビリティに影響を与えている。ドラマに登場した飲食店に訪れるファンが増え、地域経済には貢献しているものの、混雑も引き起こしている。この現象を通じて、モビリティ産業の新たな課題やチャンスを探り、地域活性化にどう活かすかを考える必要がある。
静かに暴れるキャラクターの魅力

谷口にとって、静かな作風のなかに狂気すら入り交じった情念を持つキャラクターを描くのは得意分野だった。欧州で評価を得るきっかけとなった『歩く人』(講談社)は、主人公が家の周りをただ歩くだけの作品だ。小津安二郎の映画のような静かな雰囲気をまとっているが、主人公はときにはビルのらせん階段を駆け上がり、木に登り、学校のプールに無断で入り泳ぎ出す。
『孤独のグルメ』の後、再び久住とタッグを組み、2003(平成15)年から『通販生活』(カタログハウス)で連載された『散歩もの』では、妻を持つ中年の文具メーカー勤務という、一見疎外感のない主人公が登場する。しかし、この主人公も再開発で変わりゆく街に対して怒りをあらわにし、毒づきながら他人の家の軒先にある井戸を勝手に使い始める場面がある。
そもそも久住も、泉晴紀とコンビで『ガロ』にて漫画家デビューした人物であり、その作品集『かっこいいスキヤキ』(扶桑社)からも社会から逸脱する姿勢が感じ取れる。つまり『孤独のグルメ』は、どんなにあがいても社会の本流には乗れないふたりの作者が見事にシンクロして生まれた作品なのだ。
しかし、発表当時はあまり共感を得られなかった。掲載誌『月刊PANjA』が迷走したあげく短命に終わったことも一因だろう。それが再評価されたのは2000年以降、インターネットの普及にともなって『孤独のグルメ』が
「発見」
され、注目されるようになったからである。