大音量でうるさい「選挙カー」、実はレンタルだった! 知られざる業界ネタに深く切り込む
選挙専門レンタカー会社が活躍する理由

街頭演説車を公道で走らせる場合、
・公職選挙法
・道路交通法
・道路運送車両法
などの法律が関係してくる。
これらの所管は、選挙管理委員会・警察・国土交通省など多岐にわたる。選挙カーを走らせながら流すスピーチの内容にも厳しい制限がある。
こうした複雑な法令をクリアし、さらに候補者が1票でも多く獲得できるように法律の範囲内で最大限のPRをしなければならない。最大限のPRとは、言うまでもなく多くの人に関心を持ってもらうことだ。そのため、選挙専門のレンタカー会社が活躍する素地(そじ)があった。
実際、選挙に精通していないと思わぬ事故が起きる。2016年の参議院議員選挙では自民党の青山繁晴候補(当時)の街頭演説車が、桁下2.6mの高架下を通り抜けようとしたところ、街宣車の上部が激突するという物損事故を起こしている。街宣車は上部に看板やスピーカーなどを搭載している。選挙に精通していないと、こうしたミスが起きることもある。
少し話は脇道にそれるが、街頭演説車がマイクやスピーカーなどの音響機材を使用できるのは8時から20時までの間に限られる。平日・土日は関係ないが、休日は疲れを癒やすために昼まで寝て過ごす人もいるだろう。
それなのに、「選挙カーの大音量で起こされた」「赤ちゃんを昼寝のために寝かしつけていたら選挙カーの音量で起きてしまった」といったという苦情は日常的に目にする。腹が立つから、候補者に文句を言いに行きたくなる気持ちも十分に理解できるが、実はこうした文句を言いに来る人がいればいるほど、選挙カーには効果があるということを逆説的に証明してしまう。なぜなら、選挙カーに文句を言う人はハナから票を入れてくれないからだ。
一方、街頭演説車が来ないことで「うちの町内(や地域)を軽視している」と怒る人もいる。こうした人は街頭演説車が来ることで満足し、票を入れてくれる。こうしたことから見ても、街頭演説車は目立つことが最大の目的と言えるだろう。
自前の選挙カーを所有しない政党に属さない候補者は、レンタカーで調達することになる。レンタルの方が割高になるが、それでも選挙に出馬するからには当選しなければならない。候補者が街宣車を借りる事情は、落選したら次の選挙まで収入の道は閉ざされるのだから1票でも多くの票を拾うためなら使えるものは使うという一言に尽きる。