新規ファン獲得の大きなカギ【連載】開かれたF1社会とその敵(5)
- キーワード :
- 自動車, F1, 開かれたF1社会とその敵
VR観戦が開く新時代

今後の方策として考えられるのは、データを今まで以上にオープンにすることだ。このデータを無料で提供すれば、F1をより理解しやすくなり、新しいファンにも優しい。また、マニアもレースの背景をより深く知ることができる。
それに加えて、F1の関係者とメディアがわかりやすく説明する努力も欠かせない。特にSNSの活用が重要だ。若い世代はテレビを見る時間が短く、SNSを利用する時間が長いため、これを生かすことが必要だからだ。
さらに、VRやARを使ったバーチャル観戦の可能性を探るのも面白い。F1のチケットが高騰しているなかで、VRを活用すれば渡航費用を抑えることができる。例えば、北海道にいながら鈴鹿のメインスタンドにいるかのように観戦できる。2024年のF1には約23万人が来場したが、VRを使えば物理的な収容人数の制限を超えることができ、サーキット側も収入が増えるというメリットがある。
筆者(武田信晃、ジャーナリスト)はスポーツではないが、VRコンサートの取材と体験をしたことがある。その没入感は驚くべきもので、視点を切り替えることもできるため、観戦がより楽しくなる。現在、VRゴーグルは高価だが、今後価格が下がれば、間違いなく参加者を増やす要因となるだろう。
また、DRSに関連して、追い抜きで順位を戻す行為が発生することがある。知らない人が見ると不思議に思うだろう。こうした状況はシンプルな方が理解されやすいため、オーバーテイクポイントでのコースの外をグラベル(舗装されていないコース)にするべきだ。現在は舗装路が多いため、ドライバーは
「最後の最後は舗装路を使ってコースをショートカットし、相手の前に出たら順位を譲ればいい」
という考えを持つ。それがなければ、グラベルにはまって自分にダメージを受けることになるので、今のような動きにはならない。
コース外の舗装路は安全性に寄与し、広告スペースにもなるため、サーキット側が舗装路にしている理由は理解できる。しかし、ミスをすればグラベルにはまるという報いを受ける方が、ファンから見ればシンプルで受け入れやすいはずだ。商業主義とのバランスが求められている。