JR西日本「夢洲延伸」は実現可能か? 11月から検討会、30年IR開業に向けた鉄道戦略を考える
進化する大阪の観光交通網
大阪府と大阪市は11月から大阪湾の人工島・夢洲(大阪市此花区)と市中心部を結ぶ鉄道路線の検討会を始める。2025年度前半まで鉄道事業者らと議論を重ね、方向性を打ち出す方針だ。列車を降りた家族連れや若い男女が駅を出てユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に向け、長い列を作る。アジア諸国から来たと思われる訪日外国人観光客も多い。ようやく秋めいてきた10月中旬の週末、USJの最寄り駅となるJRユニバーサルシティ駅(此花区)は、朝から活気にあふれていた。
桜島線は西九条駅(此花区)から桜島駅(同)までの4.1km。USJへ向かう路線として知られるが、大阪市の将来にさらに大きな役割を果たすと期待されている。2025年大阪・関西万博の会場で、2030年ごろの開業を目指す統合型リゾート(IR)予定地の夢洲へ延伸する計画があるからだ。
夢洲へは南の人工島・咲洲(住之江区)から大阪メトロ中央線が2025年1月に延伸し、大阪・関西万博のアクセス路線となる。しかし、鉄道はこれ1本。大阪駅(北区)や新幹線が発着する新大阪駅(淀川区)からは遠回りしなければならず、大阪府市はIR開業後に中央線だけでは心もとないと見ている。
桜島線延伸など3ルートを協議へ
米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスなどで構成する大阪IRが9月、違約金なしでIR事業から撤退できる解除権を放棄したのを受け、大阪府市は11月から
・JR西日本
・京阪電鉄
・大阪メトロ
など鉄道事業者や学識経験者らと夢洲方面へ向かう鉄道路線の採算性や実現性、技術的課題などの検討に入る。
検討するのは、桜島線延伸のほか、京阪電鉄中之島線の九条駅(西区)延伸、過去に国の審議会で整備が望ましいとされた中之島駅(北区)から夢洲へ向かう答申路線。会議は非公開で進め、方向性が出た時点で議論の概要を公開する。大阪府市で組織する大阪都市計画局は
「鉄道事業者の非公開情報も議論するため」
と非公開の理由を説明した。
吉村洋文大阪府知事は
「ベイエリアの成長に極めて重要。特にUSJと夢洲がつながるのはインパクトが大きい」
横山英幸大阪市長は「次の時代の大阪の議論をしたい」と記者会見などで新路線開設に期待を示している。