外国人観光客が6年で45倍! 「城崎温泉」の成功に学ぶべき“おもてなし交通”の絶妙さ
データ分析もさることながら

具体的な施策は、英語・仏語版の情報発信、宿泊予約サイト「Visit Kinosaki」の運営、世界各国の旅行博への参加、フリーWi-Fiの整備、観光案内所の運営、PR動画の制作、ウェブマーケティングの強化など、本格的なインバウンド対策を始めた。
城崎温泉はもともと小規模な個人経営の旅館が多く、大規模な宿泊施設は少ない。そのため、中国人団体客などを受け入れることは難しかった。そこで、個人旅行のシェアが高い欧米やオーストラリアの個人客に焦点を絞った戦略を立てた。このような戦略が功を奏して、2015年には外国人宿泊者数が3万1442人になった。
そのような中、観光庁は地方創生プロジェクトのひとつとして日本版「DMO」(Destination Management Organization)登録制度を2015年11月に開始した。
DMOとは、地域にある観光資源に精通し、地域と共同して観光地域づくり実現の戦略を考える官民連携の組織・法人を指す。城崎温泉も2016年6月に官民連携による豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション」(TTI)を発足させ、旅行商品の販売や海外への営業、外国語での宿泊予約などを行った。
さらに、来訪者の定量・定性調査等のデータ分析にも力を入れた。その結果、2011年に1118人だった豊岡市の外国人宿泊数は、2017年に5万800人となり、6年間で約45倍に急増したのである。
もちろん今まで説明してきたような、「ターゲットを絞る」「官民一体となったDMOの発足」「データの定量・定性分析」などは城崎温泉のインバウンド成功の直接的な要因であるといえる。
しかし、城崎温泉の成功には間接的ながら「交通の利便性」という大きな要因があったと筆者(カレイラ松崎順子、教育学者)は考える。以下、その交通の利便性について詳しく紹介したい。