日本が「観光地」として海外に選ばれる、実にもっともな理由【連載】平和ボケ観光論(1)
日本の観光は、独自の「平和ボケ」が魅力の源泉。2021年の五輪では日本のもてなしが際立ち、訪日外国人は増加中。約90%の若者が平和を実感し、安定した水道水や子ども向け施設、女性の安全な旅行環境が、再訪を促進。日本独自の観光資源として、この「平和ボケ」がますます注目を浴びている。
女性が行動しやすい街の設計と風土
日本の平和ボケ的観光資源の最後のキーワードとして
「女性」
を挙げたい。日本では女性がひとりでも安全に旅ができる。夜に女性が繁華街に出掛けても、よほどのことがない限り問題は起こらない。
旅行会社では「女子旅」のプランが用意されていたり、飲食店で「女性料金」が設定されていたりすることで、女性の行動範囲が広がっている。カフェなどの飲食店では女性客が多いことも珍しくなく、街には美容院やネイルサロン、アパレル店、雑貨店などがたくさんある。なかにはそこでしか手に入らない商品も多いだろう。こうした女性が行動しやすい街の設計と風土は、インバウンドにも好意的に受け入れられているに違いない。
2003(平成15)年の映画『ロスト・イン・トランスレーション』では、米国人女性(スカーレット・ヨハンソン)が東京の渋谷をひとりで散策する姿が印象的に描かれている。異国の繁華街にいる緊張感や危険を警戒する様子はなく、興味のままに自由に街を歩いている。このようなシーンが撮影できたのは、日本の安全性があったからだ。
以前、海外旅行からの帰りの飛行機で、日本酒(ワンカップ大関)を飲みながらこれからの日本旅行について盛り上がっている白人女性ふたり組を見かけた。彼女たちは何度も日本に来ているリピーターのようで、日本に来るのを本当に楽しみにしている様子が伝わってきた。こんなにも日本が好きなファンがいることに驚いた。
彼女たちのような日本のファンを増やし、平和な日本が今後もそのままであってほしいと願う人々の輪を広げていくことが、令和の観光政策の要だと考えている。