日本が「観光地」として海外に選ばれる、実にもっともな理由【連載】平和ボケ観光論(1)

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日本の観光は、独自の「平和ボケ」が魅力の源泉。2021年の五輪では日本のもてなしが際立ち、訪日外国人は増加中。約90%の若者が平和を実感し、安定した水道水や子ども向け施設、女性の安全な旅行環境が、再訪を促進。日本独自の観光資源として、この「平和ボケ」がますます注目を浴びている。

子どもが甘やかされる文化

ルース・ベネディクト『菊と刀』(画像:講談社)
ルース・ベネディクト『菊と刀』(画像:講談社)

 日本の平和ボケの要因として、観光資源としての水が重要なキーワードになるが、次に挙げられるのが

「子ども」

だ。この子どもには、広い意味での“子ども的”なものも含まれている。

 愛知県長久手市にある愛・地球博記念公園内に2022年11月1日に開設された「ジブリパーク」は、コロナ禍でスタートしたが、コロナが収束するとインバウンド客が殺到することになった。

 日本経済新聞の調査によると、ジブリパークの入場者の

「約3割」

がインバウンドだそうで、その多くは家族連れや若者たちだろう。そもそも、コロナ前からジブリ美術館やサンリオピューロランドなどは家族連れに人気で、訪れる理由も子どもたちのリクエストが大きいことがわかる。

 もちろん、ディズニーランドやUSJなどの定番人気施設も多くの人に楽しまれているが、日本独自の施設が子どもたちに特に人気だ。例えば、神奈川県川崎市にある「藤子・F・不二雄ミュージアム」では、英語、中国語、韓国語の音声ガイドが用意されており、コロナ明けからインバウンドが急増している。

 また、ポッキーやチョコパイなどの日本のお菓子も外国の子どもたちに人気で、日本でしか味わえないフレーバーも多いため、訪れた子どもたちの楽しみが広がっている。多くの飲食店では子ども料金が設定されており、これもインバウンドにとって新鮮な体験だ。

 少し前にYouTubeで見た動画では、家族で日本旅行をした後、帰国時に子どもが帰りたくないと駄々をこねたエピソードが語られていて、非常に興味深かった。

 日本文化を語る上で欠かせない名著『菊と刀』(1946年)の著者で文化人類学者のルース・ベネディクト(1887~ 1948年)は、欧米では幼い子どもを厳しくしつけ、年長になるにつれて徐々に緩める教育が一般的であるのに対し、日本では幼い子どもが甘やかされ、成長するにつれて社会の厳しさを教えるという

「教育方針の違い」

について説明している。また、2022年に亡くなった思想史家の渡辺京二も、その著書『逝きし世の面影』(1998年)で

「子どもの楽園」

という章を設けている。この作品は幕末から明治にかけて日本を訪れた異邦人の訪日記を読み解き、日本の近代が失ったものの意味を根本から問い直している。

 日本を訪れた外国の子どもたちは、日本で自分たちが甘やかされていることを敏感に感じ取り、帰りたくなくなるのかもしれない。

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