日本が海外から観光地として選ばれる本当の理由【連載】平和ボケ観光論(1)
日本の観光は、独自の「平和ボケ」が魅力の源泉。2021年の五輪では日本のもてなしが際立ち、訪日外国人は増加中。約90%の若者が平和を実感し、安定した水道水や子ども向け施設、女性の安全な旅行環境が、再訪を促進。日本独自の観光資源として、この「平和ボケ」がますます注目を浴びている。
子どもが甘やかされる文化

日本の平和ボケを支える要因として、水と並んで重要なキーワードになるのが「子ども」だ。ここには、子どもを社会全体で温かく迎え入れ、その安全を保障する寛容な風土が含まれている。愛知県長久手市の「ジブリパーク」は、日本経済新聞の調査によれば入場者の約3割がインバウンドであり、その多くを家族連れや若者が占めている。川崎市の「藤子・F・不二雄ミュージアム」でも多言語ガイドが整備され、利用者が急増している。こうした施設を訪れる家族連れを支えているのは、子どもが自由に歩き回っても安全だという社会全体への揺るぎない信頼感である。
この信頼は、親にとっての心理的な負担を劇的に解消し、家族単位での移動を促進させる。ポッキーやチョコパイといった日本のお菓子が人気なのも、食の安全性が前提にあるからだ。多くの飲食店で子ども料金が設定されていることも、家族での外食を容易にしている。文化人類学者のルース・ベネディクトは著書『菊と刀』で、日本では幼い子どもを寛容に扱い、成長とともに社会の厳しさを教える教育方針について述べた。また、思想史家の渡辺京二も『逝きし世の面影』において、かつての日本がいかに「子どもの楽園」であったかを詳述している。
現代の日本においても、社会全体が子どもを見守るインフラとして機能している特性は失われていない。日本を訪れた子どもたちが帰りたくないと駄々をこねる背景には、自身の身の安全を気に病むことなく、無防備なまま自由に過ごせる環境がある。この安心感こそが、施設の内容以上に家族連れを惹きつける大きな要因となっている。子どもが安心して感情を露わにできるほど甘やかされる文化は、平和な社会の恩恵を最も直接的に享受できる体験であり、世界から家族連れを呼び寄せる強力な力となっている。