大阪はなぜ「ため池」だらけなのか? 1平方kmあたりの密度「全国2位」の納得理由

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大阪府には1万1102か所のため池があり、1平方キロメートルあたりの密度は全国で2位だ。降水量が全国平均を下回る中、農業用水を確保するために古代から多くのため池が築かれてきた。これらのため池は歴史的にも重要な水利システムの一部となっている。特に狭山池は日本最古のため池で、先進的な技術「敷葉工法」が使われている。地形や水利の発展が、古代大阪の繁栄を支えてきた。

大阪の繁栄、千年の証し

大阪府のため池(画像:大阪府)
大阪府のため池(画像:大阪府)

 ところで、大阪平野の最大の特徴は、古代以降も途切れることなく都市が繁栄し続けたことだ。この点を他の古代都市と比較すると、大阪の特異性が際立つ。

 例えば、奈良時代(710~794年)の都である平城京が置かれた奈良市は、平安京への遷都後も宗教都市として存在したが、その規模は大きく縮小した。同様に、平安時代(794~1185年)以降、日本の政治や文化の中心となった京都も、江戸時代(1603~1868年)には奈良ほどではないものの、政治的・経済的地位を失った。

 一方、大阪は時代とともにその姿を変えながらも、一貫して繁栄を続けてきた。7世紀の難波宮の時代には古代国家の中心として、その後は瀬戸内海交易の拠点となる港湾都市として発展した。中世には四天王寺を中心とした宗教都市になり、16世紀末には石山本願寺や豊臣秀吉による大坂城の築城によって、戦国時代を代表する都市に変貌を遂げた。

 江戸時代には「天下の台所」と呼ばれる経済の中心地となり、現代に至るまで日本を代表する大都市であり続けている。都が置かれた期間は短いが、都市としての歴史は京都よりもはるかに古く、その繁栄の継続性は他には見られない。

 大阪が長期にわたって繁栄を続けた背景には、古代から連綿と続く

・運河
・治水
・ため池

といったインフラの整備がある。特にため池は、農業用水の確保だけでなく、洪水調整や生活用水の供給など多目的に機能し、都市の持続可能性を高める重要な役割を果たしてきた。

 大阪に多数存在するため池が示唆するのは、適切なインフラ整備が50年や100年といった短期的なスパンではなく、1000年単位で地域の発展に影響を及ぼすという重要な事実なのである。

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