軽くて丈夫なのになぜ? カーボンファイバーが「市販の乗用車」にあんまり普及しないワケ

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カーボンファイバーは軽くて高い剛性を持っているものの、コストの高さや修理の難しさが普及の障害になっている。2023年には自動車向けカーボン市場が241億7000万ドルに成長し、2031年には700億ドルに達すると予測されているが、リサイクルの課題も依然として残っている。モータースポーツでの成功を量産車にどう活かすかが今後のポイントとなる。

高コストと修理難が普及を妨げるカーボン

カーボンファイバーリサイクル工業株式会社のCFRPから炭素繊維を回収する技術(画像:カーボンファイバーリサイクル工業)
カーボンファイバーリサイクル工業株式会社のCFRPから炭素繊維を回収する技術(画像:カーボンファイバーリサイクル工業)

 もうひとつの理由は、修理が難しい点だ。自動車部品である以上、小さな事故で破損や変形が起こるのは避けられない。金属なら、たたいて直したり、新しい部材を溶接したりして修理することができる。いわゆる板金修理が可能だ。

 しかし、カーボンパーツは基本的に修理ができない。板金ができず、破損すればそのパーツごと交換するしかない。修理費用が高くつくため、ユーザーが購入をためらうこともある。結果的に、カーボンを多用した車が売れなければ、よい車を作っても意味がなくなる。

 さらに、カーボンのリサイクルが難しいことも、普及が進まない理由のひとつだ。鉄やアルミニウムはリサイクル技術が確立されているが、カーボンはそうではない。持続可能性が重視される現代において、リサイクルが難しい素材は導入にハードルがある。

 もちろん、リサイクル技術の研究は進んでいる。カーボンファイバーリサイクル工業(岐阜県御嵩町)は、いぶし瓦焼の技術を応用してカーボンファイバー製品から樹脂を焼き、炭素繊維を回収する技術を開発中だ。岐阜大学とも協力して、事業化に向けた技術の標準化を目指しているが、実用化にはまだ時間がかかりそうだ。

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