バスドライバー不足の救世主? いま「中古バス」ががっつり注目されるワケ 観光業の回復を通して考える

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日本の観光業が回復しているなか、訪日外国人が最も利用する公共交通は鉄道とバスだ。特に注目されているのが、コストを抑えた中古バスで、価格は280万~490万円と新車の約5分の1の安さだ。バス事業者はドライバー不足や赤字に悩まされながらも、経済的メリットを享受しつつ企業イメージを守るという難題に直面している。SDGsへの貢献と効率的な運行を両立させることが求められるなかで、中古バス市場の活用が重要な鍵を握っている。

事業者の動向

さまざまなバス(画像:写真AC)
さまざまなバス(画像:写真AC)

 繰り返しになるが、路線バスは、2024年問題にともなう働き方改革の影響で、ドライバー不足やモータリゼーションによる慢性的な赤字に悩んでいる。また、Covid-19による

「定期券収入 = 安定収入」

の減少も大きな問題だ。現在の最大の課題は、中古車両は安く確保できても、ドライバーの確保が非常に難しいという状況にある。最近では、ドライバーの給与を上げたり、入社時の支度金を増やしたりする路線バス事業者の努力が見られる。

 このような内部予算の見直しでは、コストのかかる新車の導入費用も見直される。新車台数を減らして中古車両を増やすか、新車の延命措置を図るかのどちらかで、予算の見直しが可能になる。今後は、ドライバーの給与や支度金を上げる方策がさらに議論され、中古車両の活用に焦点が当たることが期待される。

 路線バス業界では、減便や廃線が増加している。バスドライバーの数を維持するためには、中古車両の活用を通じて資金を捻出し、その結果としてバスドライバーの給与や支度金を上昇させる流れを作ることが最も効果的だ。

 地方交通の維持が難しい状況では、地方自治体に支援を求めるのは難しい。したがって、企業の自助努力が求められる問題であり、中古バス市場もその支援を行う役割を果たしている。

 最近では、東京の国際興業バスや福岡の西鉄バスが、レトロフィット中古バスを導入している。これは古いエンジン車両を電動に改装したもので、電動バスはエンジン車両に比べて部品点数が少なく、メンテナンス性や環境性能に優れている。これにより、長期的な活躍も期待でき、SDGsへの貢献にもつながる選択肢となる。大都市バス事業者にとって、新たな中古バス導入の流れが期待されているのだ。

 安くて良質なバス車両を見つけて経営改善につなげたり、中古の電動バスで地域への貢献を行ったりするチャンスが広がっている。ただし、古い車両が増える可能性もあるため、良質な熟練工を確保することが重要だ。バス事業者間で熟練工を共有するなど、地域で解決すべき問題も残されている。

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