都心アクセスが良いベッドタウンなら山ほどあるのに、「流山市」が選ばれ続けている根本理由

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流山市の人口が急増しているのは、つくばエクスプレスの開通や利便性の向上、そして積極的な子育て支援施策のおかげだ。特に流入人口は流出人口を上回っており、2021年には待機児童ゼロを達成した。井崎市長のリーダーシップのもと、流山市は「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げ、子育て環境を整え、魅力的な居住地としての地位を確立している。

人口動態の危機感

東武アーバンパークライン(画像:写真AC)
東武アーバンパークライン(画像:写真AC)

 現在、流山市は目覚ましい成功を収めているが、将来に向けてはまだいくつかの課題が残っている。その根本的な問題は人口動態にある。

 2024年4月に厚生労働省が発表した最新データによると、流山市の合計特殊出生率は1.59で、全国平均の1.33を大きく上回り、千葉県内でトップとなっている。しかし、長期的に見るとこの数字は十分ではない。日本の人口置換水準(人口が長期的に一定を保つために必要な出生率)は約2.07とされている。このため、流山市の現在の出生率では、長期的には人口が減少していくことになる。

 この問題について、千葉県地方自治研究センターの佐藤晴邦氏は、2017年に発表した論文「流山市の人口増加とシティセールスを考える」(『るびゅ・さあんとる』2017年2月号)で重要な指摘をしている。

 佐藤氏は、流山市の現在の人口増加が主に市外からの移住者によるものであり、住宅供給には限界があるため、この状況を永続的に維持することは難しいと述べている。そのため、人口減少の影響は他の地域より遅れるものの、避けられない課題となる。佐藤氏はさらに、

「流山市のDEWKS(共働きで子育て中の世帯)世代の子どもたちが10年後には成人を迎える」

と指摘している。この論文が発表された2017年から10年後、つまり2027年頃には、現在の子育て世代の子どもたちが成長し、独立や進学のために流山市を離れる可能性が高まる。この世代交代は、流山市の人口構造や都市の性格に大きな変化をもたらす可能性があるのだ。

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