都心アクセスが良いベッドタウンなら山ほどあるのに、「流山市」が選ばれ続けている根本理由

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流山市の人口が急増しているのは、つくばエクスプレスの開通や利便性の向上、そして積極的な子育て支援施策のおかげだ。特に流入人口は流出人口を上回っており、2021年には待機児童ゼロを達成した。井崎市長のリーダーシップのもと、流山市は「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げ、子育て環境を整え、魅力的な居住地としての地位を確立している。

流山市の広告戦略

横浜市青葉区の東急田園都市線藤が丘駅(画像:写真AC)
横浜市青葉区の東急田園都市線藤が丘駅(画像:写真AC)

 このキャッチコピーを用いた広告戦略は興味深い。流山市は、東急田園都市線と相互乗り入れをしている東京メトロ半蔵門線の車内に広告を出稿した。これは明らかに、東急田園都市線の利用者を直接ターゲットにした戦略である。

 その広告の内容も秀逸だった。横浜市青葉区から流山市に移住した人をモデルに起用し、

「私は横浜市青葉区から流山市に引っ越しました」

という文言を添えた。青葉区は東急田園都市線沿線の人気住宅地として知られており、流山市が青葉区と同等以上の居住環境を提供できるという自信を示すもので、同時に東急田園都市線沿線の住民に直接メッセージを送るものだった。

 流山市が東急田園都市線をライバル視する姿勢は、開発当初から明確だった。2007(平成19)年に開業した「流山おおたかの森S・C」がその端緒となる。この商業施設の運営は、高島屋の子会社である東神開発が担っており、同社は東急田園都市線沿線の代表的な商業施設「玉川高島屋S・C」の運営会社でもある。

 この選択は偶然ではなく、流山市は商業施設の設置時点から、東急田園都市線に匹敵する、あるいはそれを超える街づくりを目指していた。流山おおたかの森S・Cの開業は、流山市の野心的な計画の第一歩だった。この商業施設には、知名度の高い店舗が多数入居しており、都心に出掛けなくてもほとんどの買い物需要が満たせるようになっている。

 しかし、流山市の戦略は単に東急田園都市線を模倣するだけではなかった。例えば、環境に配慮した「グリーンチェーン戦略」を展開し、街全体の緑化を推進するなど、独自の付加価値創出にも力を入れている。これらの多面的なアプローチにより、流山市は単なるベッドタウンを超え、総合的な魅力を持つ都市へと成長を続けているのだ。

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