都心アクセスが良いベッドタウンなら山ほどあるのに、「流山市」が選ばれ続けている根本理由

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流山市の人口が急増しているのは、つくばエクスプレスの開通や利便性の向上、そして積極的な子育て支援施策のおかげだ。特に流入人口は流出人口を上回っており、2021年には待機児童ゼロを達成した。井崎市長のリーダーシップのもと、流山市は「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げ、子育て環境を整え、魅力的な居住地としての地位を確立している。

東急沿線に挑む流山

井崎義治市長(画像:流山市)
井崎義治市長(画像:流山市)

 流山市の発展は、交通の便がよくなったことだけでは説明できない。首都圏には都心へのアクセスが良好なベッドタウンが数多く存在するからだ。流山市の“特異な発展”を理解するためには、その戦略的なアプローチに注目する必要がある。

 つくばエクスプレスが開業する前、流山市は国から市面積の約18%にあたる627haを区画整理事業の対象として割り当てられていた。実際、流山市は少子高齢化や区画整理した土地を売らなければ財政が逼迫するという問題を抱えていた。

 ここで流山市が採った戦略が、他のベッドタウンとの差別化につながった。2003(平成15)年に就任した井崎義治市長は、外部人材を採用した「マーケティング室」を市役所内に設置し、さらにマーケティング課に発展させた。これにより、民間企業のマーケティング手法を取り入れ「選ばれる街づくり」に着手した。

 流山市が採用した戦略で特筆すべき点は、その

「ライバル設定」

だ。通常、自治体は近隣や同じ沿線の都市と比較するが、流山市は大胆にもライバルを

「東急田園都市線沿線」

に定めた。つまり、千葉県内の同様の自治体ではなく、首都圏でも人気の高い地域と直接対決することを考えたのだ。

 この斬新な位置付けは、2010年に始まった「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーに最も明確に表れている。このフレーズは単なる子育て支援のアピールではなく、流山市が東急田園都市線沿線の街々と同等以上の子育て環境を提供するという野心的な目標を示していた。

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