船も「空気抵抗」を気にする時代? 隅切型“居住区”の導入が進むワケ

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船舶設計が革新を遂げており、「隅切型居住区」が注目を集めている。このデザインは、風圧抵抗を25~30%削減でき、大型貨物船の燃費改善やCO2排出量の削減に寄与している。国際的な環境規制に対応する新技術の導入が進むなか、海運業界は持続可能な未来に向けた挑戦を続けている。

隅切型居住区の効果とメリット

常石造船「MT-COWL」(画像:常石造船)
常石造船「MT-COWL」(画像:常石造船)

 隅切型居住区の最大の利点は、風圧抵抗を減らして燃費を改善できることだ。

 船舶の運航では燃料コストが大きな割合を占めるため、空気抵抗を減らすことで燃料消費が抑えられ、結果として運航コストの削減が期待できる。さらに、燃料の消費が減ることでCO2の排出量も減少するため、環境保護の観点からも重要な意味を持っている。

 また、風による横揺れや風圧が軽減されることでかじを保ちやすくなり、隅切型居住区は船の安定性を高めるとされている。これにより、航行時の安全性が向上する。さらに、隅切型居住区を取り入れることで、外観がモダンなデザインの船が実現できる点も、船主や設計者にとって魅力的なポイントだ。

 最近、日本で建造される貨物船では隅切型居住区が一般的になっている。特に注目を集めたのが、今治造船(愛媛県今治市)の「エアロ・シタデル」だ。これは居住区だけでなく、エンジンケーシングやファンネルも一体化し、流線形状を実現することで風圧抵抗を25~30%削減できる。また、暴露部の階段を上部構造内に収めることで、海賊対策も行われている。

 さらに、常石造船(広島県福山市)では居住区の角を斜めに切るだけでなく、居住区のブリッジウイング部と支柱の前面に箱形の付加物を取り付けることで隅切り形状を実現した「MT-COWL」を日本郵船と共同で開発している。このデザインにより、風圧抵抗が約10%低減し、18万t級のばら積み貨物船に適用すると年間520tのCO2を削減できる見込みだ。

 これらの事例は、燃費改善や環境対策としての新技術導入が、今後の海運業界においてますます重要になることを示している。

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