船も「空気抵抗」を気にする時代? 隅切型“居住区”の導入が進むワケ
燃料コスト削減を狙う新設計
船舶産業が風圧抵抗の削減に注目するのは、
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・燃料コスト
・二酸化炭素(CO2)排出量
の削減というふたつの大きな目的があるからだ。船舶の燃料となるC重油の価格は変動しながらも上昇傾向にあり、輸送コストを抑えることが船主の重要な課題になっている。このため、燃費を改善する手段のひとつとして隅切型居住区の導入が進んでいる。
さらに、海運業界は世界の貿易量の約90%を支える一方、CO2排出量の約3%を占めている。国際的な規制や環境への配慮が高まっていることから、船舶設計にも環境負荷を軽減する対策が求められている。国際海事機関(IMO)は、2030年までに船舶のCO2排出量を2008年比で40%削減する目標を掲げており、この目標達成のため、船の形状改善やエンジンの燃費性能向上、新技術の導入が進められている。隅切型居住区の採用もその一環で、特に燃費改善に効果が期待されている。
船が航行する際、最も大きな抵抗は当然ながら水中での流体抵抗だ。しかし、海上では風の抵抗も無視できない要素になる。特に高速で走る船や、上部構造が大きい貨物船は風の影響を強く受ける。そのため、風圧抵抗を減らすことが燃費に直接影響を与える。
風圧抵抗が船のエネルギー消費に与える影響は、水の抵抗に比べればはるかに小さい。これは空気の密度が水の1/800だからだ。そのため、かつては水の抵抗が重視され、風圧抵抗はあまり考慮されていなかった。しかし、燃料コストが上昇している現在では、たとえ数%の燃費の差でも航続距離に大きな影響を与えることがある。特に強風時には、船上の構造物にかかる風圧が増えるため、隅切型居住区のような設計が効果を発揮する場面が多い。