首都高トラックの「車線ふさぎ」動画炎上! ドライバーの勤務先を激しく罵る「正義の味方」は、中小企業のSNS被害を想像できないのか?
先日、トラックドライバーによるあおり運転が問題になった。この事案に対して、当人だけでなく運送会社にも厳しい批判がSNSに多く寄せられた。しかし、会社は従業員の不祥事に対してどこまで責任を負うべきなのだろうか。
組織行動の複雑性
次に、採用後の就労状況がドライバーの暴発や暴走につながるかどうかを考えたい。
人気漫画「キングダム」では、始皇帝の中華統一をテーマに、正義を貫く主人公・李信(りしん)の対極として、戦場で残虐な行為を繰り返す桓騎(かんき)とその軍隊員が描かれている。物語のなかで、桓騎軍に一時移籍した古参キャラクター・尾平(びへい)が次のように語るシーンがある。
「桓騎軍と違って、飛信隊(※李信の軍)は乾いてねェんだ。心が乾いてねえから、略奪も凌辱も必要ねェんだ」
今回のあおり運転の事案について、運送会社側の責任を問う人々は、基本的にこのような論法で運送会社を批判している。つまり、ドライバーにストレスを与える働き方をしているから、ドライバーが暴発するのだ――という理屈だ。しかし、筆者は
「甘い」
と思う。確かに、与えられた環境がストレスを生むことで、非道徳的・非倫理的な行動の遠因になることもある。しかし、もし直接的な因果関係があるのなら、この暴発したドライバーが所属する運送会社の全ドライバーが日常的にあおり運転を行っているはずだ。
どんなによい職場環境であっても、不満を抱える人は存在する。漫画のように、人の感情や組織行動は単純ではない。