株式上場が「20年」も遅れた、2つの決定的理由【短期連載】東京メトロ、破られた沈黙(2)
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東京メトロの株式上場が20年遅れた背景には、都営地下鉄との一元化問題や経済環境の変化があった。2004年に民営化されて以来、営業収益は約1.2倍に増え、関連事業も成長を遂げた。資産は1.5倍に拡大し、多角化も進んでいる。しかし、経営統合の障壁が上場を阻んできた。次回は、上場への道筋を探っていく。
一元化の行方と猪瀬氏
前後するが、都営地下鉄との一元化問題について、以下の時系列で概観してみる。
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・2010年:猪瀬直樹副知事(当時)が統合案を再提起し、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が設置された。
・2011年:国土交通省と東京都が経営統合の結論を保留。代わりに、乗り継ぎ利便性の向上や割引の拡大といったサービス改善を優先することが決定される。
・2012年:猪瀬氏が東京都知事に当選し、一元化への期待が高まる。
・2013年:九段下駅で、都営地下鉄と東京メトロのホームを隔てていた「バカの壁」が撤去され、将来の一元化を見据えた動きとして話題になる。
・2013年:猪瀬氏がスキャンダルにより辞職。
猪瀬氏の辞職以降、都知事が一元化問題に言及することはほとんどなくなり、近年まで動きが見られなかった。
一方で、東京メトロは2010年代に入り、経営の多角化を推進した。2017年にはベトナムに現地法人を設立し、海外進出も果たしている。国内でも、賃貸住宅や老人ホームの運営にまで事業を拡大していることが、2024年3月期の有価証券報告書から明らかになっている。
このような着実な事業拡大を背景に、東京メトロはついに上場に向けた動きを本格化させている。なぜ今、このタイミングなのか、その理由については次回詳しく解説する。