株式上場が「20年」も遅れた、2つの決定的理由【短期連載】東京メトロ、破られた沈黙(2)
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民営化が生んだ新戦略
これを受けて、総資産は以下のように変化した。
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●2004年3月31日時点
資産合計:1兆3015億8511万5743円
●2024年3月31日時点
連結総資産:2兆225億2400万円
個別総資産:1兆9981億2200万円
東京メトロは民営化後、積極的に事業を拡大し、大きな成功を収めてきた。その成功の要因は、新しい路線の建設や不動産開発への投資、さらに関連事業への多角的な展開にある。
具体的には、駅構内に小売店や飲食店を増やしたり、無線LANや光ファイバーの貸し出しなどのメディア事業を始めたり、さらにはホテルやマンション経営にも進出したりしている。この成功モデルは他の都市でも注目され、2018年4月に民営化された大阪市営地下鉄も、東京メトロの戦略を参考にしていることから、その成功が裏付けられている。
『毎日新聞』2007年11月28日付の朝刊には、大阪市営地下鉄の民営化について次のような記述がある。
「民営化が即、利便性の向上や運賃にはねかえるわけではない。しかし、長期的な経営改善を考えた場合、新線計画の中止や職員の削減といった課題を解決するにも、遊休資産を活用し「駅ナカ」ビジネスを展開するにも、古いしがらみを断ち切る方が、間違いなくやりやすい。営団から民営化した東京メトロ(東京地下鉄)は、成功の好個の例だ」
東京メトロは、民営化を機に新たな事業展開や経営効率化に積極的に取り組み、確かな成功を収めてきた。
また、多角的な事業展開に加え、鉄道事業自体の収入も安定しており、そのため当初は近い将来に株式上場し、完全民営化が達成されるだろうと予測されていた。しかし、実際にはこれまで株式上場は実現していない。そもそも、民営化の根拠としていた
「東京株式会社法」
も、完全民営化の方針で条文が作られていたのに、である。