日産がプラグインハイブリッド車「自社開発」に踏み切ったワケ e-POWERとの親和性に勝機はあるのか?【リレー連載】ハイブリッド・ア・ゴーゴー!(9)

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日産自動車は、2020年代後半を見据えてPHVの自社開発を進めている。ハイブリッド技術「e-POWER」との親和性を生かし、需要の増加が見込まれるPHV市場に対応していく方針だ。2024年上半期には、EVの販売比率が65%に対し、PHVは35%に拡大する見通しだ。特に中国市場では、BYDの新技術が注目されているため、日産は航続距離や燃費性能で差別化を図る必要がある。

PHVで狙う市場

BYD Seal 06 DM-i(画像:BYD)
BYD Seal 06 DM-i(画像:BYD)

 日産が新たに投入するPHVは、どの市場を狙っているのだろうか。PHVは、

・EV充電インフラが十分に整っていない国や地域
・長距離移動のニーズ

に対して魅力的な選択肢になる。

 日産の地域別売上比率(2024年3月期)は、

・欧州:18%
・アジア:9%

とそれほど高くないが、これらの地域では排ガス規制が厳しく、燃費性能を重視した技術開発が求められている。そのため、PHVが魅力的な選択肢となる可能性がある。

 日産は2023年9月に、欧州市場に投入するすべての新型車を2030年までにEVにすると発表したが、これを撤回してPHVを投入する可能性も考えられる。新たに投入するPHVの車種には、エクストレイルやキックス、ローグなどのスポーツタイプ多目的車(SUV)や、新型セレナといったミニバンのラインアップが含まれるだろう。

 世界的にPHVの需要が高まるなか、各社から新モデルや新たなPHVシステムが投入される可能性が高い。特に注目すべきは、中国の比亜迪(BYD)である。2024年4月に開催された北京モーターショーでは、第5世代PHVシステム「DM-i」が発表され、46%という世界最高水準の熱効率を達成し、航続距離は2100kmを超えている。

 中国のスタートアップやテクノロジー市場について報じる36Kr Japanによると、BYDの2024年8月の乗用車販売台数は前年同月比35%増の37万854台に達した。このうちPHVの販売比率は60%となり、BEVの40%を上回った。2024年6月から販売を開始したミッドサイズセダン「秦(Qin) L DM-i」と「Seal 06 DM-i」が、PHVの販売増を牽引している。

 日産は今後、競争が激しくなるPHV市場で他社との差別化を図る必要がある。特に、航続距離や燃費性能などで技術的な優位性をアピールすることが、自社開発において重要なポイントとなる。

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