北陸新幹線「米原ルート」 実は“料金”も小浜ルートより安かった! 所要時間以上の衝撃事実をご存じか

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北陸新幹線小浜ルートへの反対意見が高まっている。工期や費用に関する問題が浮上しており、国土交通省の資料や沿線の知事のコメントからは、慎重な検証が必要だとされている。また、米原ルートとの所要時間がほぼ同じである可能性が指摘され、運賃試算の透明性についても疑問が呈されている。実際には、小浜ルートがより安価であるとのデータも示されている。これらの情報は、今後の議論に大きな影響を与えるだろう。

運賃計算の疑義

2024年8月31日配信の筆者の前回の記事「北陸新幹線「米原ルート」 所要時間を計算したら「小浜ルート」よりも速かった!」
2024年8月31日配信の筆者の前回の記事「北陸新幹線「米原ルート」 所要時間を計算したら「小浜ルート」よりも速かった!」

 まず国の小浜ルート料金はどのように算定されたのか。算定の基となる営業キロを計算してみると、新大阪~敦賀間は国の試算で140.0km+敦賀~金沢間125.1km、合計265.1kmになる。265kmというと、現在の越前たけふ~上越妙高間とほぼ同じで、この区間の指定席特急料金を消費増税前の2016年当時の価格で3990円となる。となると運賃は4750円と試算していたようだ。

 これに対し米原ルートでは、新大阪~敦賀間は経路特定制度により、米原経由でも湖西線経由でも距離が短い湖西線経由で計算されることになっており、新大阪~敦賀間は米原経由だと152.6km(筆者のルート案では151.7km)のところ、133.1kmで計算されるのが慣例である。この133.1kmに敦賀~金沢125.1kmを加えて258.2km。201km以上の場合は特定都区市内制度が適用され、大都市の中心駅からの営業キロ計算になり、大阪~新大阪間3.8kmを加算して262.0kmで計算となる。これで運賃は小浜ルートと同じ4750円になるはずである。

 続いて、米原ルートの料金について、どうすればこれほどまでに二郎ラーメンのような盛り方をした数字になるのか、最大限考えてみた。以下のような結果になった。

 1万1190円から当時の運賃4750円を引くと6440円。これを埋めるには東海道新幹線と北陸新幹線で指定席特急料金を打ち切り計算にしないと埋まらない。実際、博多駅などJR会社境界駅での料金打ち切り計算例はある。ただし博多駅での打ち切りの場合は改札を出ない限り、自由席特急料金+1回分の指定席料金で計算となっているため、指定席料金520円は通算となる。料金はいずれも2016年当時のものだ。

・特急料金 新大阪~米原:2480円
・特急料金 米原~金沢:2590円
・指定席料金:520円
・小計:5590円

これではまだ合計1万340円で850円足りない。この微妙に残った850円の差は何か。

「もしや…指定席料金は二重取りの計算なのではないか」

そこで指定席料金を通算ではなく二重取りにしてみよう。これで520円の加算で1万860円である。まだ330円残っている。これはずっと謎であったが、最後にひねり出したのが

「もしや……経路特定制度を適用していないか」

そこで経路特定制度を外し、湖西線経由の営業キロを適用せずに求めてみると、新大阪~金沢間の営業キロは277.7km、特定都区市内制度適用で大阪~金沢間の営業キロ281.5kmで5080円となり、前述の指定席特急料金6110円を足すと、政府の米原ルート試算通りぴったり1万1190円になるのだ。

 なんと経路特定制度を適用せず、特急料金も米原で打ち切り計算にし、さらに指定席料金520円は1回分にできるところを2回かかる前提にした、盛りに盛った数字で米原ルートの方が、料金が大幅に高く見えるように設定された数字だったのだ。

 しかも、料金打ち切り計算についても博多駅や新青森駅のようなターミナル駅で打ち切るならまだしも、ターミナル駅の2駅手前で打ち切るというのは愚策である。筆者のXには

「東海道新幹線内でのJR西日本による料金取りっぱぐれを防ぐため、東海道新幹線内はJR西日本が第2種鉄道事業者(線路を借りて営業する鉄道事業方式)として営業する前提で考えるべき」

との声が寄せられた。ナイスアイデアである。実際、都営三田線が2駅だけ乗り入れている、東京メトロ南北線乗り入れ区間(目黒~白金高輪間)では都営側が第2種鉄道事業者として運行し、運賃は目黒から乗っても通算にして営業しているではないか。

 これを適用せずに米原ルート料金試算を二郎ラーメンのような盛り方をし、料金マシマシトッピング付きにした数字にして小浜ルートの優位性を示した国の比較は、もはや

「小浜真理教」

ではないのか。ちなみに米原ルートでも運賃・料金を湖西線経由の営業キロ計算にして指定席特急料金も通算にすると、2016年当時の料金なら

・乗車券:4750円
・指定席特急料金:3990円
・合計:8740円

となり、小浜ルートと変わらない。2024年価格でも

・乗車券:4840円
・指定席特急料金:4060円
・合計:8900円

と当初の1万1190円と比べると大幅に安い。取りあえず小浜ルートと同額まで持ってきたここからが安くなるポイントだ。

 指定席特急料金は、東京~大宮・新横浜間を含まない区間で見ると、おおよそ下記のキロ程で区切られた料金体系のようだ。JR西日本の北陸新幹線はJR東日本の料金体系を、同じJR西日本でも山陽新幹線はJR東海の料金体系を踏襲している。

・0~100km JR東海:2290円、JR東:2400円
・101~200km JR東海:3060円、JR東:3170円
・201~300km JR東海:3930円、JR東:4060円
・301~400km JR東海:4710円、JR東:4830円
・401~500km JR東海:5150円、JR東:5370円
・501~600km JR東海:5490円、JR東:6070円
・601~700km JR東海:5920円、JR東:6070円
・701~800km JR東海:6460円
・801~900km JR東海:7030円
・901~1000km JR東海:7570円
・1001~1100km JR東海:8130円
・1101~1200km JR東海:8670円

 ご覧の通り、JR東海の料金体系の方が少し安い。現状、北陸新幹線は東京方面からの直通のみを前提とした料金体系だが、東海道・山陽新幹線との直通を前提とするならば、当然、新大阪方面との直通利用ではJR東海の料金体系が採用されるだろう。小浜ルートも山陽新幹線との直通を視野に入れてはいるが、新大阪までJR西日本の線路なので、JR東日本の料金体系が新大阪まで適用されることになる。

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