日産とトヨタのアプローチが正反対! 「電動車向けエンジン」はロングストロークorショートストローク、結局どちらが優位なのか?
世界の自動車メーカーは急速なEVシフトに直面し、内燃機関の必要性を再評価している。日産はロングストロークエンジンの開発を進め、熱効率50%を目指している。一方、トヨタはショートストロークを採用し、エンジン全高を10%低減した。両社は異なるアプローチを取りながら、電動車向けの効率的なエンジン開発に取り組んでいる。エンジンの進化は電動車時代においても続いている。
「熱効率50%」への挑戦
日産は次世代の電動車向けエンジンとして、「e-power発電専用」エンジンの開発に取り組んでいる。目指すのは熱効率50%の実現だ。
エンジンの熱効率は、燃料を燃焼させたエネルギーのうち、どれだけが仕事に使われるかを示す指標で、熱効率が高いほど燃費やエンジンの効率が向上する。
日産はこれまで「e-power」というハイブリッドシステムを展開しており、このシステムではエンジンが発電専用となり、発電機を稼働させて発電した電気を使ってモーターで走行する。そのため、e-power向けのエンジンには、定常回転での効率的な発電性能が求められ、日産の新型エンジンは吸気ポートや燃焼室などを定常運転に最適化している。
日産が新型エンジンをロングストローク化する理由は、熱効率の向上を目指すためだ。ロングストロークはストロークする距離を長くすることで、低速トルクを高めたり熱効率を向上させたりできるが、高回転エンジンには向かないとされていた。しかし、電動車向けのエンジンには高回転性能が必要ないため、日産はロングストローク化という基本技術に立ち戻り、効率重視のエンジン開発を進めている。
現時点で日産のエンジン開発は熱効率43%に達しており、さらに7%の向上を目指して、フリクションの低減やリーン燃焼、排熱回収機構の効率化に取り組む予定だ。