「トラックドライバーが触ったおにぎりは買いたくない」 ドライバー自身による“棚入れ問題”が浮き彫りにしていた、現代社会の構造的病理

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コンビニやスーパーでトラックドライバーが商品を陳列する光景は、かつてはよく見かけた。しかし最近では、このような棚入れの姿をあまり見なくなってきた。この背景には、ドライバーを下に見る消費者心理が見え隠れしている。

汗水垂れ流しの美徳消失

荷下ろし作業(画像:写真AC)
荷下ろし作業(画像:写真AC)

 無償の自主荷役や棚入れが横行する背景には、発荷主・着荷主の双方に人手不足がある。この状況を考えると、優越的地位の濫用に該当しないよう、運送会社やドライバーに対して適切な対価を支払って自主荷役や棚入れを依頼すればよい。確かに、自主荷役や棚入れが拡大すると

・輸送リソースの圧迫
・積載効率の低下

を招くデメリットもあるが、この議論は今回のテーマとはずれるため省略する。

 一方で、一部の消費者が抱くドライバーや作業員に対する偏見は依然として残っている。今後、(可能性は低いと思うが)有償化を条件に量販店でのドライバーによる棚入れが再開されても、

「ドライバーが触ったおにぎりは買いたくない」

とクレームを入れる人はまだ一定数いるだろう。

「汗水垂瀝(かんすいれいれき。 汗を流して一生懸命働くこと)」

という言葉が示すように、一生懸命働く人たちを尊敬する気持ちは美徳であるべきだ。しかし、棚入れ問題から見えてくる一部の人たちの意識は、どうやらそれとは違うようだ。「トラックドライバーによる棚入れ」には、物流業界が長年抱えてきた問題だけでなく、日本人が持っていた美徳としての意識の変化、特に悪い方向への変化が見える。

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