「トラックドライバーが触ったおにぎりは買いたくない」 ドライバー自身による“棚入れ問題”が浮き彫りにしていた、現代社会の構造的病理

キーワード :
, ,
コンビニやスーパーでトラックドライバーが商品を陳列する光景は、かつてはよく見かけた。しかし最近では、このような棚入れの姿をあまり見なくなってきた。この背景には、ドライバーを下に見る消費者心理が見え隠れしている。

ドライバーの自主荷役と賃金問題

改正前の「標準的な運賃」では、自主荷役については別途収受の原則を打ち出していただけだったが、改正後はモデル料金を提示することで、自主荷役適正収受の方針をより明確にしている(画像:坂田良平)
改正前の「標準的な運賃」では、自主荷役については別途収受の原則を打ち出していただけだったが、改正後はモデル料金を提示することで、自主荷役適正収受の方針をより明確にしている(画像:坂田良平)

 今春改正された「標準的な運賃」では、ドライバーによる自主荷役を付帯業務料として運賃とは別に受け取る方針を明確に示している。

 ドライバーが行う棚入れなどの付帯作業や自主荷役の最大の問題は、それが

「無償で行われている」

ことだ。さらにいえば、これはドライバー自身が望んでいるわけでもなく、運送会社が望んでいるわけでもない。むしろ、取引先の強い立場にある

「荷主から強制されている」

状況だ。その上、自主荷役の強制は長時間労働につながり、結果としてドライバーの労働環境が悪化するという、非常に厳しい状況を生んでいる。これを下請法では「優越的地位の濫用(らんよう)」と呼んでいる。

 以前、筆者が当媒体に書いた「「手積み・手降ろし」を渇望する運送ドライバーが最近増えているワケ あれほど嫌われていたのになぜなのか」(2024年2月4日配信)では、手積みや手卸しに対する手当を支給することで、ドライバーが自ら手荷役を希望する例を紹介した。

 このことは運送会社にも当てはまり、棚入れや手積み・手卸しに対して適切な対価が得られ、競合他社との差別化ができるのであれば、歓迎する運送会社もある。対価がしっかりと収入に反映されれば、自主荷役を歓迎するドライバーが現れるのも当然だ。

全てのコメントを見る