「臭い」「暑い」「疲れる」 タクシーの「車内デザイン」は本当に今のままでいいのか?

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タクシー業界は高齢者や障がい者に対応するため、従来のセダン型からユニバーサルデザインのワゴン型に移行している。しかし、快適性や座席の柔軟性が足りない点が課題となっている。今後はAIやデマンド型サービスを活用し、観光と生活支援の両立を目指す必要がある。また、車内の可変性やWi-Fi、テレワーク対応など、多機能化も重要だ。自動運転時代を見据えた人間中心の空間設計が、これからのカギとなる。

今後の四つ課題

タクシー(画像:写真AC)
タクシー(画像:写真AC)

 生活者のニーズにどう答えていくか、筆者(北條慶太、交通経済ライター)は今後の課題として四つの点を考えた。

●個の意識への対応
 筆者は先日、当媒体に「率直に言う 零細タクシー会社が生き残るためには「乗り合いサービス」「子育て支援」が必須である」(2024年7月26日配信)という記事を書いた。そのなかで、今後のタクシー業界にはデマンド型の乗り合いサービスや個別のニーズに対応する必要があると訴えた。地域のバス輸送が衰退し、タクシー車両を通常営業以外にもデマンドや乗り合いで活用するニーズが増える。行政も関わる形で、コミュニティーバスをコミュニティー乗り合いタクシーに転換する動きも見られる。車両のサイズや種類によって異なるが、

・ひとり用シートの並列
・座席間の可変式の仕切り(新型コロナ等のウイルスを気にする方への対応にもなる)
・冷暖房通風孔での寒暖調整

などは今後必要になるだろう。バスの設計思想をタクシーのインテリアにも取り入れる形が期待されている。

●介助や子育てに対する配慮
 デマンド型の乗り合いタクシーを利用する子育て中の親が増えている。乗り合いだと運賃が安くなり、自治体が子育て支援の一環として推奨するケースも多い。ベビーカーを収納できるスペースや、座席の仕切りを外して椅子をスライドさせ、幼児と一緒にゆったり座れる機能があると便利だ。これは介助が必要な人への配慮にもつながる。

 現行のタクシー車両では、大きな車いすやベビーカーの収納が難しい。また、座席の仕切りを取り外し、椅子をスライドして高齢者や障がい者に寄り添える機能も必要だ。ポイントは「可変性」である。

・ひとりで利用する際の個人スペースの確保
・子どもや高齢者、障がい者と寄り添うスペースの確保

が重要だ。こうしたニーズに対応する可変式のシートは、今後ますます需要が高まるだろう。

●観光支援と生活支援の両立
 2024年から関西電力が神奈川県箱根町で、人工知能(AI)を活用して複数の利用者の乗降場所を最適に調整し、効率的に運行する相乗り移動サービスをタクシー会社と協力して始めた。これは主にインバウンド観光のニーズに応えるものだが、取材によると、他の自治体では観光用のAIデマンドサービスを生活利用者にも対応させることを検討する地域が増えている。

 通常、デマンドサービスではトヨタのハイエースなどバン型車両を使用することが多いが、観光と生活の支援を組み合わせることで、より効率的かつ効果的な運行が期待されている。例えば、朝や夜は生活ニーズを優先し、日中は観光客を中心に運行するなどの使い分けが可能だ。また、観光や生活を支援するための地域情報を提供する設備(モニターやQRコードでアクセスできる情報、Wi-Fi)も今後重要な機能になるだろう。これにより観光地の情報や、生活者向けの

・病院の混雑状況
・行政関連情報
・スーパーのお得情報

なども提供できるようになる。

●車内での過ごし方の多様化
 空港タクシーなどではテレワークのニーズにも対応できる環境が求められている。前述のWi-Fi接続や充電設備の整備は、ビジネス利用にも役立つだろう。さらに、通学でタクシーを乗り合いで利用するケースも増えており、移動中に学生が学習できる環境も必要だ。こうした個人の業務や学習にも対応でき、効率が上がる空間デザインがこれから求められる。

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