知られざる闇? インバウンド増加による「バイト賃金」高騰が、介護業界に大危機をもたらしていた!
観光特需で賃金が上昇するなか、福祉・介護業界は人材不足に直面している。「年収の壁」がサービス提供時間数に影響することも懸念される。地域性を考慮し、福祉・介護報酬の権限移譲や財源移譲が必要である。
必要な介護士が不足する現実

年収106万円・130万円の壁とは、扶養から外れた際に社会保険料の加入義務が生じる年収のラインだ。企業の規模によって、この上限はわずかに異なる。例えば、時給1000円と2000円で比較すると、働ける時間が半分になる。このため、パートやアルバイトの比重が大きい福祉・介護事業所では問題が生じる可能性がある。
学習院大学の鈴木亘教授は「パートタイム介護労働者の労働供給行動」という研究のなかで、パート介護労働者の賃金が上昇すると労働時間が減少することに懸念を示している。
さらに、岸田・谷垣(2011)の研究では、1302人の登録ヘルパーのデータをもとに、約2割のヘルパーが「年収の壁」を気にしていることがわかった。つまり、介護力の低下を理由に賃金を上げるだけでなく、賃金上昇と同時に「年収の壁」の制度設計についても議論が必要なのだ。
具体的には、労働力不足が深刻で社会的に必要とされる介護士や保育士などについて、適用除外を検討することが考えられる。そもそも、賃金は観光需要が増加し、人材が不足すると上昇する。しかし、福祉・介護業界では「地域の特需」(ニセコや熊本など)に対応した賃金設定が難しい要因も存在する。
その背景には、福祉・介護業界特有の賃金決定プロセスがある。