自動車エンジンの点火プラグ大手が、突然「エビ養殖」を始めちゃったワケ
日本特殊陶業は、ガソリンエンジン部品製造で培ったセンサー技術を活かし、エビの陸上養殖に進出。電動化が進む自動車業界の変化に対応し、事業の多角化を図る挑戦が注目される。
EV需要の失速と変化
将来的に自動車の電動化は進むことが確実だが、実はEVの需要は低下傾向にあり、失速している。
特に中国市場では、この2、3年でEVの市場シェアが30%台まで急速に伸びた。しかし、2023年後半から需要が急速に減少し、値引き合戦が繰り広げられている。また、世界的にもEVを欲しがるユーザーには一定の浸透が見られ、需要が落ち着いている。EV大手のテスラも2024年度には、前年に比べて初めて販売台数が減少した。
このような状況のなかで、世界の自動車メーカーはEVからより実用的なハイブリッドカーへの回帰を進めている。特に、モーターによる電動走行をメインとし、補助的にエンジンを使用するタイプのシリーズハイブリッドが増える見込みだ。シリーズハイブリッドでは、エンジンで発電した電力でモーターを稼働させるが、その際に使用されるエンジンは効率化を重視したガソリンエンジンとなる。
さらに、エンジン主体で走行し、モーターが補助をするマイルドハイブリッドも増加傾向にある。欧州メーカーを始め、日本でも導入する車種が増えてきている。こうした動きから、日本特殊陶業がシェアを握るスパークプラグや排気ガスセンサーはエンジンに欠かせない部品となり、数年前に囁かれていたエンジン廃止論とは状況が変わりつつある。
それでも、今後はEVや燃料電池車など、エンジン不要の電動車が確実にシェアを延ばしていくだろう。自動車メーカーの方針が頻繁に変わる現状では、ガソリンエンジンの需要がますます読みづらくなっている。
このようななかで、日本特殊陶業の今回の取り組みは重要な位置を占めている。この事業が軌道に乗れば、自動車部品メーカーの多角化経営の先駆けとなるだろう。今後の成功に期待したい。