トヨタ「インド新工場」 投資額3600億円も、市場拡大に潜む“若者の経済不満”というリスク

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トヨタはインド経済の成長と若年層労働市場への期待から、同国での生産拡大を進めるが、経済格差やテロリスクといった社会的不安も増大。インド市場の将来性と潜在的リスクのバランスを見極める必要がある。

中国に代わる新たな成長エンジン

中国進出の日本企業、ピークから1千社・1割減、2024年は約1.3万社(画像:帝国データバンク)
中国進出の日本企業、ピークから1千社・1割減、2024年は約1.3万社(画像:帝国データバンク)

 では、なぜトヨタはインド市場への展開を強化しているのだろうか――。

 これはトヨタに限らず多くの日本企業に共通する背景だろうが、世界的に影響力を拡大させるインド経済への期待がある。2023年、インドは中国を抜いて世界一の人口大国になり、若年層が多いことから将来的な労働市場として大きな魅力がある。

 インドは14歳以下の人口が全体の4分の1を占め、小学校や中学校の義務教育年齢層が2億人を超え、労働力人口は10億人に迫る勢いだ。また、経済力でも2025年には日本を、2027年にはドイツを抜いて世界第3位の経済大国になると予測されており、進出先としてのインド市場の重要性が高まっている。

 インドの2023年の国内総生産(GDP)の伸び率は8.2%と高い数字を記録し、2022年の7%を上回っており、今後も高い成長率を維持すると予測される。こういった明るい動向がトヨタのインド進出を促進していることは間違いない。

 一方、こういった直接的要因のほかに、「間接的要因」も考えられる。

 近年、世界の自動車メーカーの間では電気自動車(EV)をめぐる競争が激化し、特に中国はその中心にあり、中国市場で日本の自動車メーカーは競争で厳しい立場にある。中国経済の成長率は鈍化傾向にあり、不動産バブルの崩壊や若者の失業率、少子高齢化、賃金上昇など、中国に進出する外資系企業にとって世界の工場だった中国は終焉(しゅうえん)を迎え、明るい兆しは見えない。

 また、経済的威圧や米中貿易摩擦、改正反スパイ法などの地政学リスクを考慮すれば、中国への進出強化は外資企業にとっては難しいものになってきている。こういった間接的要因も企業のインド進出を促進するバロメーターとなっていると考えられよう。

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