中央新幹線7兆円超の道筋と避けられぬリスク【短期連載】リニアはさておき(4)

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リニア中央新幹線は2027年の完工を目指している。工事費は7.04兆円に増加し、用地取得は75%が完了した。超電導リニアの実用化には課題もあるが、JR東海の経営姿勢は変わらず、未来のリニア開業に向けて全力を尽くす。

リニア中央新幹線の現状

東海道新幹線(画像:写真AC)
東海道新幹線(画像:写真AC)

 リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる政治的な論争や、「国商」「最後のフィクサー」と呼ばれた名誉会長・葛西敬之氏(2022年没)などの影響もあり、JR東海は多くの人にとって複雑なイメージを抱かせる存在かもしれない。しかし、一般の人たちが本当に知りたいのは、創業以来の長い歴史に刻まれた、同社の鉄道事業の成功と未来への壮大なビジョンではないか。本連載「リニアはさておき」では、創業から現在に至るまでの歴史を掘り下げ、鉄道事業の神髄を探っていく。

※ ※ ※

 これまでJR東海の概要や鉄道事業、関連事業について見てきたが、連載の最終回では将来展望について考えたい。特に、これまで「さておかれていた」リニア中央新幹線について触れる。まず、その現状を整理してみよう。

 2024年3月期決算の説明会資料によると、

・工事の完了予定時期:2027年(令和9年)以降
・品川~名古屋間の工事予算:7.04兆円

となっている。工事の遅れと聞くと、真っ先に静岡工区問題を思い浮かべるかもしれないが、JR東海は

「静岡工区以外でも難易度の高い工事を控えており、課題を一つ一つ着実に解決しながら進める」

としている。予算については、2021年3月期の決算発表で、これまでの見込み額5.52兆円から7.04兆円(28%増)になると公表済みだった。工事費増加の理由は、

・難工事への対応
・地震対策の充実
・発生土の活用先確保

などを挙げている。ただ、2024年3月末時点における用地取得状況、発生土活用先の確定状況は、

・用地取得状況:約75%
・発生土活用先の確定状況:約80%

であり、関係者を交えて解決しなければならない課題がまだ残されている。工事の完了予定時期を確定できないのはもちろん、工事費がさらに膨れ上がる可能性すら残されている。

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