EVの「大型化」はなぜ環境に悪いのか? しかも都市部の事故リスク「3倍以上」 解決策は日本にあるかもしれない
EVの大型化が「モビシティ」として問題視され、環境負荷や歩行者リスクの増加が指摘されている。2022年にはe-SUVが世界のEV販売の35%を占め、リチウムやコバルトの需要も増大。都市部ではEVの歩行者へのリスクがICE車の3倍とされ、小型化が急務。日本の軽自動車規格が新たな解決策となる可能性もある。
EVの肥満問題
世界各国で社会問題化している肥満(obesity)だが、それは人間だけはなくクルマにも及んでいることが指摘されている。世のクルマもまた“肥満”傾向にあるというのである。
2024年6月に「Nature Energy」で発表された研究で、英オックスフォード大学の地理環境学部教授であるクリスチャン・ブランド氏は
「大型で重量のある電気自動車(EV)車両の生産、販売、使用の増加」
を「モビシティ(mobesity)」と名づけ、早急に解決されなければならない問題であることを指摘している。
EVへの移行は、気候変動を緩和するための世界的な取り組みの要であるとされ、現在販売されている自動車の14%をEVが占めている。
しかし最近の傾向として、モビシティ車両の生産と運用への驚くべき移行が見られ、これが炭素排出量削減への思わぬ障害になっているのだ。
電気スポーツタイプ多目的車(e-SUV)はガソリン車のSUVに比べてエネルギー効率が3倍優れているといわれているが、それでも製造には大幅に多くのリソースが必要でエネルギー消費量も大きいため、環境フットプリントが増加し、電動化による潜在的な利益が損なわれている。
将来的に世界中の車両が電動化されても、このモビシティの出現と増加によって、世界の気候目標に沿った炭素排出量の削減が実現しない可能性が出てきたのだ。