共同運行・共同経営について改めて考えよう【短期連載】希望という名の路線バス(5)
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バス業界における共同運行が進化している。2021年4月には、日本で初めての共同経営協定が熊本市で発足し、前橋市や広島市でも路線調整や共同利用による効率化が進められている。政策転換によりカルテルに対する規制が緩和され、バス事業の維持や新規路線開拓が促進されることが期待されている。
バス共同運行の三つのメリット

同じ路線であっても、複数の会社のバスが同じバス停に到着することがある。東京でも、成城学園前駅~二子玉川駅の間で東急バスと小田急バスが、高円寺駅~赤羽駅の間や中野駅~池袋駅の間で関東バスと国際興業バスが共同運行している。
このような運行は、
・互いの主要エリアに進出できる(自社のバスサービスの範囲が自然に拡大する)
・自社で扱うバスの台数を約半分に減らすことができる
・ダイヤを維持するために必要な運転手の数を減らすことができる
というメリットがある。
まさに高速バスと同様ある。高速バスは運行距離が長いので、各地域の事業者が連携するのが一般的なのだ。
バス事業のカルテル問題

これを市単位での協働・連携に当てはめるとなると、話は違ってくる。地方のバス事業者同士が協働・連携してバス事業を行うとなると、各方面から
「カルテルではないか」
という指摘を受けるようになった。
カルテルについては、大学の経済学や経営学の講義で習った人も多いだろう。複数のバス事業者が互いに連絡を取り合い、本来は各事業者が独自に決めるべき
・運賃
・運行本数
を共同で取り決めるイメージだ。
A社、B社、C社が話し合ってカルテルを結べば、競争がなくなり、3社で高いバス運賃が設定される恐れがある。最も影響を受けるのはバスを利用する生活者である。生活者は運賃の差でバス事業者を選ぶことができなくなる。また、安い運賃で利用できた区間でも高い運賃を支払わなければならなくなる。
そのため、カルテルそのものが、生活者の利益を損なう不当な取引制限として禁止されてきた。バス事業においても、カルテルは運賃を不当につり上げ、自助努力をしない非効率な事業者を温存する可能性があり、
「悪」
とされてきた。