連結営業収益1.7兆円超! JR東海とはどのような会社なのか【短期連載】リニアはさておき(1)
新幹線を主体とした経営戦略

JR東海は、新幹線を主体とした収益構造であり、そもそもJR東日本やJR西日本とは会社の使命や経営戦略が異なっている。経年理念に
「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」
を掲げ、その解説で「当社は、東海道新幹線と中央新幹線により、現在も、そして将来も日本の大動脈輸送を担うという使命を果たし続けていきます」と、自らの使命を明確にしている。
経営戦略面では、葛西敬之氏の著書『飛躍への挑戦』(ワック)によると、
・東海道新幹線の競争力強化
・新幹線保有機構の是正
・東海道・中央新幹線の一元経営
を「三正面作戦」として、使命を全うすべく取り組んできた。
東海道新幹線の競争力強化は、JR東海の収益を増加させるためにも欠かせない。特に当時は、羽田拡張や関西空港、岡山空港、広島空港開港と大きな環境変化が控えており、対航空機戦略を練らざるを得なかった。そのようななか、のぞみの新設、速度向上、品川駅開業と着実に施策を実施し、東海道新幹線優位に持ち込んだのは大きな成果といえる。
JR発足時は、全ての新幹線を新幹線保有機構が保有し、JR各社が支払うリース料を国鉄債務の返済にあてていた。しかし、このルール下でJR各社はリース料を支払うものの、一方で車両と施設を更新する設備投資もしなければならなかった。
さらには、将来的にリース料が増減する、あるいはリース期間完了後、新たな支払いが発生する可能性があるなどの制度的な欠陥があった。この制度的な欠陥は、JR東海だけでなく、JR東日本、JR西日本の株式上場にも障害となっていた。
そこで、1991年10月に新幹線保有機構を解散し、JR各社が新幹線を保有することとなった。もちろん、新幹線を保有する代償として、JR各社が新たな債務を背負うこととなる。新幹線保有機構の解散にともなう譲渡代金は約9.2兆円であり、このうち5.1兆円をJR東海が背負うこととなった。
JR東海が、東海道・中央新幹線を一元経営するには、5.1兆円という膨大な債務を解消しつつ、新たな設備投資を行ったうえで、さらに中央新幹線を自前で建設・運営する経営体力が必要となる。
長期債務の返済については、バブル景気後に超低金利時代に突入したことがJR東海の追い風となり、1992年3月末時点で約5.5兆円あった長期債務は、2016年3月末には約1.9兆円となった。この結果、総額3兆円の財政投融資を活用した長期借り入れが可能となり、中央新幹線の建設が前進することとなる。