経済効果は810億円! 宇都宮LRT「西側延伸」が引き起こす“都市再生”の大シナリオ、「JRと東武が近くなる」なんて序章に過ぎない

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宇都宮市は「芳賀・宇都宮LRT」の西側延伸計画を進行中。2030年代前半に約5kmが開業予定で、400億円の投資が見込まれる。成功すれば、宇都宮市は持続可能な都市モデルの先駆けとなる。

宇都宮市の歩行者優先改革

芳賀・宇都宮LRT(画像:写真AC)
芳賀・宇都宮LRT(画像:写真AC)

 宇都宮市の計画が先進的なのは、従来の自動車優先のまちづくりから脱却している点だ。

 市はLRTの西方延伸計画の一環として、JR宇都宮駅前から宇都宮地方裁判所までの約2kmをトランジットモールにする計画を立てている。これは、歩行者と公共交通を優先した空間づくりによって、中心市街地のにぎわいを創出しようという取り組みである。

 トランジットモールとは、一般車両の通行を制限し、公共交通と歩行者のみを通行させる街路である。実現すれば、宇都宮の中心市街地を一変させる可能性を秘めている。

 宇都宮市は早くからトランジットモールに注目しており、2006(平成18)年の「大通りにぎわいまつり」で実証実験を行っている。

 宇都宮市が発行している「大通りにぎわいまつり(トランジットモール社会実験)調査報告書」によると、2006年に行われた実証実験の結果は次のようになっている。この実験では、大通りの一部をバスや歩行者のための空間にすることに

・バスの利便性が良くなった:37%
・歩きやすさが良くなった:37%
・街のにぎわいが良くなった:57%

などの回答があった。

 調査結果はすでに古いが、西側延伸を機に実証実験を繰り返し、トランジットモール化の理解を促進する価値はある。いずれにせよ、トランジットモール化は交通形態を変えるだけでなく、都市のあり方そのものを変える重要な機会である。

 歩行者中心の空間づくりは、人々の交流を促進し、コミュニティーの形成に貢献する。それが魅力的な都市空間の創造につながれば、新たな投資を呼び込み、都市経済の活性化にもつながる。

 このように、宇都宮市の大胆な構想は、いずれもコンパクトシティ化を進める地方都市に大きな示唆を与えるものである。

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