宇都宮LRT「西口延伸」は本当に成功するのか? 開業約1年で振り返るべき、「富山ライトレール」があまり活性化につながらなかった3つの理由とは

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「芳賀・宇都宮LRT」は宇都宮市の発展を加速させ、開業から半年で37万人が利用、地価も上昇している。今後の成功のカギは、中心市街地の魅力を向上させ、郊外の商業施設との差別化を図ることだろう。

富山LRT導入後の商業衰退

富山ライトレール(画像:写真AC)
富山ライトレール(画像:写真AC)

「第4期富山市中心市街地活性化基本計画」には膨大なデータが含まれている。これらのデータをもとに、筆者(山本肇、乗り物ライター)は、LRT導入後に富山市の中心市街地が思うように活性化しなかった理由を次のようにまとめている。

●郊外大型商業施設との競合
 富山市内には、LRT沿線以外にも大型商業施設がある。例えば、郊外の婦中町にある「フューチャーシティ ファボーレ(平和堂アル・プラザ富山)」は、売り場面積3万4954平方メートル、大型駐車場を備え、車での来店を前提としたビジネスモデルで成功を収めている。売り場面積が1万平方メートルを超える商業施設は、郊外だけでも富山市内に六つある。LRTの利便性向上だけでは太刀打ちできない魅力があり、中心市街地の商業施設から顧客を奪っている可能性がある。

●強い自動依存文化
富山市はひとりあたりの自動車保有台数が全国トップクラスであり、LRTが導入されても、長年培われてきた自動車中心のライフスタイルを大きく変えることは難しい。実際、富山市の自動車保有台数は2014年の27万241台から2019年には27万8556台と約1%の微増である。南北接続後、富山市が2023年にまとめた調査では、「交通手段が変化した」と答えた人は17%で、そのうち50%が自動車からの転換としている。しかし、富山港線(富山ライトレール)部分の利用者数は平日・休日ともに1.1倍に増加する一方、市内軌道線の利用者数は減少しており、中心市街地への回遊性が不十分であることがわかる。

●商業集積の欠陥
 従来の中心市街地は富山駅から離れた総曲輪(そうがわ)である。中心市街地の中核であり、最も核となるエリアは富山大和をキーテナントとする「総曲輪フェリオ」であり、集客力の高い老舗百貨店を中心とした商店街を中心とした繁華街を形成している。公共交通の利便性が高まったとはいえ、人の流れが戻ってくるような魅力に欠ける。2020年に西武富山店跡地に建設された「SOGAWA BASE」も期待されたが、物足りない印象だ。結局、中心市街地のにぎわいは富山駅周辺に移ってしまった。富山駅周辺だけ再開発が進み、地価が上昇している。

 これらの要因が複合的に作用して、富山市の中心市街地はLRT導入後も期待されたほど活性化していない。このことは、都市の活性化は公共交通の整備だけでは達成できず、

「総合的なアプローチ」

が必要であり、LRTの導入だけでは都市問題の解決にはならないことを示している。富山市の事例がまさにそれを示している。

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