EV覇権の地政学! 背後にチラつく中国の巧みな「欧米分断戦略」とは
バイデン政権が中国製EVに対する関税を100%に引き上げるなか、EUも最大37.6%の関税を適用。中国は強く反発し、貿易摩擦の激化が懸念されるが、中国は米欧の分断を狙い、自制的な対応を取る可能性が高い。今後、EV覇権をめぐる地政学的な緊張が続く見通しだ。
貿易戦争の深化と中国の戦略
では、今後中国はどういった対応をしていくのだろうか。
まず、中国は米国との貿易摩擦が長期的に続く、もしくはもっと激化するとの前提に立って物事を捉えているといえよう。秋の大統領選でホワイトハウスへの返り咲きを目指すトランプ氏は、在任中の2018年から4回にわたって計3700億ドル相当の中国製品に最大25%の関税を課す措置を実行した。
第2次トランプ政権になれば中国製品に対して
「一律60%」
の関税を課すと主張し、バイデン大統領も冒頭の対中関税100%を含み、
・太陽電池
・車載用電池
・鉄鋼
・アルミニウム
・非先端半導体
など2兆8000億円相当の中国製品に対する関税を引き上げると発表しており、秋の大統領選の行方に関わらず、米国の中国への先制的な貿易規制措置が仕掛けられる可能性が極めて高い。
中国はこの前提のもと、他国との間では可能な限り
「貿易摩擦を最小化する姿勢」
を重視すると考えられる。無論、貿易相手国との間で政治的摩擦が拡大すれば、台湾産の農産物、オーストラリア産のワインや牛肉などの輸入を停止したような経済的威圧を仕掛けていくだろうが、今回のEUによる追加関税措置に対しても、より自制的な貿易規制で対応することが現実的といえる。