「日本に来ないで」 ネットにあふれる外国人観光客への罵倒! “観光立国”なんて実はタテマエ? 「外国人嫌悪」という現代病から考える
長崎県対馬市の神社における韓国人観光客の出入り禁止措置の背景と影響などから、日本のゼノフォビアについて考える。
関門地域の歴史と矛盾
例えば、北九州市若松区(若松港周辺の産業遺産を除けば農地や住宅地が多い)、では、インバウンドに対する反対意見が最も多かった。このことから次のような洞察が得られるのではないか。
●異質に対する恐怖
観光資源の有無がインバウンドに対する意識に影響を与える。これは、未知のものに対する本質的な恐怖心を反映しているのかもしれない。
●経済効果に対する認識と受容
観光による恩恵を直接的に実感できる地域ほど、インバウンドに好意的な傾向がある。異文化受容においては「利益」が重要であることを示唆している。
●接触の質と偏見の関係
観光客との接触の「量」だけでなく、「質」も重要である。外国人がたくさんいるというだけでは偏見は減らず、むしろ摩擦を生む可能性がある。これは、大都市でも外国人嫌悪が見られるという事実とも一致している。
いうまでもなく、関門地域は、古くから
「国際貿易の要衝」
として知られている。下関港と北九州港を擁するこの地域は、戦前から国際港として栄え、現在も関釜フェリーが就航するなど、アジアとの玄関口としての役割を果たしている。多くの貨物船が行き交うこの海峡は、日本の国際化を象徴する場所のひとつといえる。
しかし、この調査結果はそんな国際色豊かな歴史を持つ関門地域においても、インバウンドに対するネガティブな感情が強いことを明らかにしている。長年にわたり外国との接点を持ち続けてきた地域であっても、観光客としての外国人の増加に対しては必ずしも寛容ではない。この一見矛盾する状況は、
・国際的であること
・インバウンドを受け入れる
ことが、必ずしも直結しないという現実を浮き彫りにしている。