「むしろ再配達が倍増する」 物流ジャーナリストの私が安易な「再配達有料化論」に警鐘を鳴らすワケ

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「再配達削減のため、再配達を有料化すべきだ」、再配達が一向に減らないことからこんな意見が出始めているが、筆者は反対である。むしろ、再配達の有料化は、再配達を倍増させる危険がある。

再配達料金設定の難題

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 先の保育園における社会実験では、罰金の額は少額だった。では再配達料金を1000~2000円のような、

「本来の配達料金を上回る高額」

に設定したらどうだろうか。皆さん、考えてほしい。そもそも、再配達料金が1000~2000円も掛かったら、EC・通販を利用するだろうか。

 神奈川県トラック協会が実施した調査では、消費者のなかで、再配達料金としてもっとも適切と選んだのは、

「100~200円未満」(28.7%)

で、「1000円以上」を選んだ人は3.3%しかいない。そもそも、アンケート回答者の3人にひとりが、

「再配達料金を追加で支払うことはできない・考えられない」

と答えている。1000円以上の再配達料金は、消費者意識とはるかに乖離(かいり)している。よって、罰金として効果のある金額に再配達料金を設定することは、まずEC・通販業界から猛反発を受けることは容易に想像がつく。現実的ではないだろう。

 かといって、100~200円程度の罰金では、消費者が「お金を払ったんだから、再配達してくれよ」と考え、再配達増加を招いてしまうだろう。額の大小にかかわらず、再配達料金を収受することについては、他にも

●再配達料金をどのように徴収するか
 料金収受のための新システムを、宅配事業者およびEC・通販事業者は構築しなければならない。

●返品率が高まる危惧
「再配達料金を取られるんだったら返品(購入キャンセル)する」という消費者が発生する可能性がある。返品物流は、再配達以上に物流事業者、EC・通販事業者の負担となる。

という課題がある。

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