ウクライナ侵攻は自動車産業も直撃 現在ドイツで不足する「自動車部品」とは?
供給が滞るケーブルハーネスとは
ウクライナからの供給が滞っている部品は、ケーブルハーネスと呼ばれるものである。ケーブルハーネスは、電源を供給したり信号を伝送したりするケーブルをまとめた複合部品である。
ケーブルハーネスは、エンジンやハンドルなどの各種制御をはじめ
・ライト類
・メーター類
・カーナビ
・エアコン
などの電気製品の稼働を支えている。
余談であるが、車1台あたり長さにして6~8km、重さで60kg以上のケーブルが使用されているとのことである。このケーブルハーネスが工場に届かない限り、他の部品が整っていたとしても、そこから先に生産を進めることができない。
ドイツ自動車工業会(VDA)によると、ウクライナは北アフリカにあるチュニジアに次いで重要なドイツの自動車部品供給地である。
なおウクライナにおいては、日本のフジクラ、住友電気工業、ドイツのLeoni社などが、配線システムやケーブルハーネスを大規模に生産していた。しかしながら、それらの企業も2月の末から工場の稼働を停止している。
ケーブルハーネス以外のリスクも
VDAはケーブルハーネス以外にも、自動車製造における部品関係の原料不足と価格の高騰、およびエネルギー供給に関するリスクを懸念している。
例えば、ウクライナはネオンガスの重要な供給地である。ネオンガスは半導体製造において高出力レーザーに使用されており、ネオンガスの供給不足がさらなる半導体不足を引き起こす可能性がある。
また、ロシアから輸入していたパラジウムやニッケルの供給もストップしている。パラジウムは排ガスを抑制する触媒になるもので、ニッケルはリチウムイオン電池の原料である。
エネルギー供給面では、ドイツは輸入ガスの約半分をロシアに依存している点が懸念材料だ。現時点では、ロシアは天然ガスの供給を停止させてはいないものの、今後供給量を縮小する可能性はある。天然ガスの供給がストップすれば、間違いなく価格高騰につながる。また、原油価格の高騰も電力価格の上昇を引き起こす一因となっている。
このように、自動車産業だけに限られた話ではないが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が産業各界に大きな影響を及ぼしつつある。