運転手さん、一番ウマい店に連れてって! 地元グルメを極める「ご当地タクシー」、その深い魅力と課題とは

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ご当地タクシーは、地元に精通したドライバーが観光資源やグルメを案内する高付加価値のサービス。シニア層やインバウンド旅行者向けに需要があり、特典付きスタンプラリーや試食サービスなどでさらに魅力を増す可能性がある。

観光資源としての存在感

アップルパイタクシー(画像:日本ご当地タクシー協会)
アップルパイタクシー(画像:日本ご当地タクシー協会)

 ご当地タクシーは外見の面白さもあって話題を呼び、多数のテレビメディアに取り上げられた。そのため、

「地域活性化策」

としても注目され、協会が設立された当初は全国的な増加が見込まれていた。地上波放送でタクシー運転手に地元のお勧めを聞くグルメバラエティー番組もレギュラー放映された。しかし、残念なことに現在は終了してしまったところも見られる。新型コロナウイルスの感染拡大によって、何年にもわたり観光客が激減したことも大きく影響しているだろう。

 元々、タクシー業界ではドライバーの高齢化やドライバー不足が課題となっていたが、コロナ収束後は

・インバウンドの急増
・働き方改革による労働基準の改正

などでさらに人手不足が深刻化している。現在、タクシー不足はオーバーツーリズム(観光公害)の弊害としても問題視されている。また、2024年4月からのライドシェアの導入など、タクシー業界を取り巻く状況は大きく変化してきている。

 ご当地タクシーの事業継続には

「地域との連携や協力」

も重要だろう。何か所も回れる軽いスイーツ系はともかく、食事系は1か所案内してもらうだけだと料金に対してやや満足感が劣るかもしれない。

・特別に試食を用意して食べ比べ・飲み比べができたりする
・特典付きのスタンプラリーを企画したりする

など、工夫が必要かもしれない。ご当地タクシーはそれ自体が観光資源であり、地域の観光産業からも積極的な働きかけが欲しいところだ。

 現在は旅行ガイドブックやグルメサイト・観光サイトが充実していることから、旅行先に関する情報は簡単に入手できる。情報は自分で完結して収集でき、人に聞く煩わしさもない。しかし、メディアから得られる情報は比較的画一的で、誰もが同じ場所に行き、同じ体験になりがちになる。安定した満足は得られるが、旅先ならではの想定外の出会いは少ない。ガイドブックにない希少性のある体験を求める人も増えてきている。

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