韓国と鳥取を結ぶ「日韓定期フェリー」5年ぶりに再開! 東アジアに新経済圏誕生が期待される理由とは
境港再生と新たな挑戦

一方、イースタンドリーム号を譲り受けたトゥウォン商船は2020年9月、境港に代わって京都府の舞鶴港京都府舞鶴市と韓国・浦項、ウラジオストクを結ぶ貨物専用の航路を開設した。しかし、これも2022年3月を最後に寄港は途絶えてしまう。
それでも鳥取県と境港管理組合は粘り強くトゥウォン商船と交渉を続け、ようやく今回の境港寄港にこぎつけた。トゥウォン商船は境港の地理的優位性を評価。これを報じた『日本海新聞』2024年5月22日付によれば、李錫基社長は鳥取を訪れた際
「日本へつながる航路は境港寄港が最適だ。貨物も観光客も需要を開発し、メリットのある航路をつくりたい」
と語っている。
鳥取県と圏域5市でつくる中海・宍道湖・大山圏域市長会は、航路の安定的な運航を支援するため、1運航あたり計100万円の支援金を交付することを検討している。2009年から2019年まで就航していたDBSクルーズフェリーに対しても同様の枠組みで支援していた実績がある。併せて、韓国人観光客の誘致に向けた旅行商品の造成や貨物需要の掘り起こしにも官民で取り組む計画だ。
そうした難題を乗り越えるには、各国の積極的な関与が必要だ。特に、自治体の役割は大きい。鳥取県は、かねてよりロシア沿海地方と友好関係を築いてきた。2016年の日露首脳会談後は、極東ロシアとの交流を県の重要施策に据え、定期貨客船の利用拡大に努めてきた。DBSクルーズフェリー時代、境港からはアイスクリームからレジャーボートまで幅広い品目が輸出されていた。まずは、航路維持のカギである貨物量の増加が必要だ。
また、観光分野でも、サイクリングツアーなど、韓国人の関心を引く旅行商品の企画が始まっている。もちろん、課題は多い。コロナ禍で観光産業は大きな打撃を受け、関連業界では慢性的な人手不足が続く。境港の玄関口である夢みなとターミナルが、期待通りのにぎわいを見せるかは予断を許さない。
だが、アフターコロナのいま「日本海の時代」の開幕に備えることは、境港の使命ともいえる。韓国との定期航路は、その試金石になるだろう。