2030年「トラック輸送費」34%アップの衝撃! この数値は妥当か?不当か? 中小の運送会社は本当に持ちこたえられるのか

キーワード :
,
2024年の野村総研の予測によると、2030年のトラック運賃は2023年比で34%上昇。しかし、ドライバー不足と賃金上昇が背景であり、特に中小運送業者にとって厳しい局面になる。デジタルマッチングや新規制が業界に変革を促すが、中小企業は人材確保と定着が生き残りの鍵だ。

中小運送業の生き残り戦略

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 以上のことを踏まえれば、中小トラック運送業が生き抜くための方向性もハッキリしている。要は

「人材の確保と定着」

が事業継続のキーになるということだ。なお、「就職四季報」(東洋経済新報社)などを読むと運送業各社の従業員定着率がわかるのだが、大手でも意外に定着率が低い(すなわち離職率が高い)会社が目立つ。

 上述のとおり大手はネームバリューで人材確保が可能であるため、それでも成り立つのだが、中小で人材が定着しないままでは、今後は致命的である。では、中小企業で定着率を上げるために何が必要だろうか。身もふたもない話ではあるが、

「給与」

が最大のファクターであることは間違いない。他社より飛び抜けて給与が高い必要はないが、ほどほどに稼げるレベルにない会社だと、優秀な人材は他社に引き抜かれてしまうだろう。

 給与以外の待遇面についても同様だが、ドライバーの待遇を改善するには相応の原資が必要であり、そのためには、仕事の内容を「割のいい」ものに入れ替えていくしかない。具体的には、新規案件の営業を強化し、荷主・元請けとの運賃交渉を進める必要がある。

 もちろん、このような活動を主導するのは、ドライバーではなく、オーナーをはじめとした経営幹部である。当たり前の結論で恐縮だが、トラック運送業という業態では、

「経営幹部の地道な努力」

が経営を左右する要素であり、この点は従業員の待遇を改善し、ドライバーの離職を防いで職場をひとつのチームとして機能させるという観点でも同様である。

 働き方改革や「改正物流法」による新たな規制は、トラック運送業にとって千載一遇のチャンスだが、追い風にもなれば向かい風にもなり得るものである。各社の積極的な取り組みが、業界の活性化につながることを期待している。

全てのコメントを見る