2030年「トラック輸送費」34%アップの衝撃! この数値は妥当か?不当か? 中小の運送会社は本当に持ちこたえられるのか

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2024年の野村総研の予測によると、2030年のトラック運賃は2023年比で34%上昇。しかし、ドライバー不足と賃金上昇が背景であり、特に中小運送業者にとって厳しい局面になる。デジタルマッチングや新規制が業界に変革を促すが、中小企業は人材確保と定着が生き残りの鍵だ。

バラ色ではない運賃アップ

6月5日発表、野村総合研究所『2024年以降も深刻化する物流危機』より(画像:野村総合研究所)
6月5日発表、野村総合研究所『2024年以降も深刻化する物流危機』より(画像:野村総合研究所)

 賃金が上がるのは、ドライバーにとっては間違いなくプラスだが、中小企業の多いトラック運送業にとっては厳しい側面もある。物価上昇には、

・値上がりした原価が上乗せされることによる「コストプッシュ」
・需要が増えることによる「デマンドプル」

と呼ばれるものの2種類がある。では今後起きる運賃上昇がどちらに近いかといえば、コストプッシュである。もちろん、トラック不足による値上げというデマンドプルの側面もあるが、基本的にはドライバーの賃上げが原因だからである。

 需要増による値上げは問題ないのだが、コストプッシュによる値上げは、中小企業にとってデメリットも大きい。なぜなら中小零細ほど人手不足が深刻であり、コストプッシュの影響を強く受けるからである。

 中小の人手不足が深刻であるのはなぜか。その最大の理由は、求職者、特に若手が

「表面的なイメージ」

で会社を選ぶ傾向が強いためだ。名前の知られた大手は比較的低い賃金でもドライバーが集まるが、中小は求職者から問い合わせをもらい、面接にこぎ着けるだけでも難しい。トラック業界でもウェブの有料媒体が求人の主流だが、多額の募集コストを掛けないと人が集まらないのが中小の現状だ。

 今後、人手不足の状況がさらに悪化すると、中小では値上げによるメリットよりも求人コスト増大のデメリットのほうが上回ってしまう可能性がある。

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