自動車の未来を占う「構造材」 ギガキャストorプレス板? 覇権を握るのはどちらなのか
軽量化の課題
日本製鉄は、自動車用プレス製品も製造する大手メーカーであり、国内大手メーカーの主要構造材も製造しているが、国内自動車メーカーのギガキャストへの切り替えの動きを受けて、プレス製品で対抗する技術を開発した。
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日本製鉄が開発した新技術は、複数の鋼板を重ね合わせてホットスタンプで成形し、部品を一体化する方法で、従来は溶接で20点近い部品を組み立てていたのに対し、部品点数をふたつに減らすことができる。プレス成形方法も改良され、複雑な構造部品の一体成形が可能となり、ギガキャストと同等の成形性も実現した。
ギガキャストのメリットとしてよく挙げられるのが軽量化だが、一見すると、鉄系材料の3分の1の比重を持つアルミ製のギガキャストは軽量化できそうだ。しかし、鋳物であるギガキャストを薄くすることは難しく、構造が複雑になればなるほど肉厚部分が増え、重量が増す。
また、鋳造品にリブなどを入れて補強することは容易であるが、アルミ材は鉄系材料に比べてどうしても強度が落ちるため、鋼板プレス品と同等の剛性を確保するには、やはり全体重量の増加が問題となる。
日本製鉄のホットスタンプ技術は、ギガキャストのこうした問題を克服する狙いがあり、高張力鋼板の高剛性プレス製品で一体成形する技術は、競争力が高いと思われる。重量面では、単純計算でギガキャストの30%以下の鋼板で製造できれば、実際には軽量化できるため、プレス製の主要構造材には、さらなる進化が望める余地があるようだ。
自動車の骨格を形成する主要構造材は現在、大きな変革期を迎えており、今後数年のうちにギガキャストが新たな主流となるか、プレス製品の改良によって復活するかが決まるだろう。
なお、ロイター通信は5月24日、テスラがギガキャストを後退させていると報じた。関係者ふたりによると、
「ギガキャスト計画が後戻りし始めたのは昨年秋で、テスラが低価格EVの「モデル2」開発を取りやめたとされる今年2月よりも前だ。当時は、モデル2の開発スピードを上げることと、コストがかさむ開発の遅れや製造面での問題発生を避ける上で、ギガキャスト計画棚上げに合理性があった」
という。