自動車の未来を占う「構造材」 ギガキャストorプレス板? 覇権を握るのはどちらなのか
製造コスト削減の鍵
ギガキャストは、テスラが自動車にいち早く導入した技術であり、メリットとデメリットが明確な技術でもある。
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テスラは、2019年に登場したモデルYで、量産車にギガキャスト製の部品を導入した。それまでは、モデル3など、従来の車と同じプレス加工による主要構造材を採用していた。しかし、プレス品を積み重ねて溶接するという構造では、組み立て時に高い精度が求められる。このデメリットを克服するために、テスラCEOが考え出したのが、組み立ての必要のない一体成型部品であるギガキャストだった。
ギガキャストの最大のメリットは、従来のプレス製品で80~90個使用されていた部品をひとつのギガキャスト製品に集約できるため、部品点数の削減が可能になることだ。また、部品管理コストの削減や組み立てラインの簡素化により、製造コストが30~40%削減されたともいわれており、大型でありながらシンプルな部品を採用できるメリットは大きい。
一方で、ギガキャストにはまだ発展途上の部分も多く、新規導入には大規模な設備投資が不可欠だ。ギガキャストの製造機械には、型締め力6000tfクラスの大型機が必要であり、従来のダイカストの上限であった4000tfクラスでは能力不足である。
また、ギガキャストの製造機械も巨大で、鋳造金型も巨大であるため、量産車に使用するには巨大な設備が必要となる。部品点数が少なく、組み立て時間も短縮できるが、従来のプレス設備とは別の設備が必要であるため、現在、国内の大手メーカーが研究・開発を進めている。
さらに、ギガキャスト製の部品は鋳造品特有のデメリットもあり、製造時の反りや歪みによる寸法精度の低下が大きな問題となっている。プレス製部品を組み合わせる場合は、組み立て時に寸法精度を調整する設備があるが、一体成形のギガキャスト製品では完成するまで寸法精度の確認ができないため、事後的な修正が困難である。
ギガキャストを大規模に採用した場合、不良率がどうしても高くなってしまうため、ノウハウの蓄積が必要になってくる。また、部品重量や剛性という点でメリットを持っているが、プレス製品業界でもギガキャストに対抗する技術開発が進められている。