山梨県の高校生は「バイク通学」が多かった! いったいなぜ?

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山梨県の高校生がバイク通学を選ぶ背景には、厳しい地形と公共交通の不便さがある。県内の交通事故率は全国ワースト2位で、道路事情やガソリン代の高さも課題。バイク通学は便利だが、リスクや費用がともなう。

鉄道空白地帯と通学事情

甲府市中心部、県内唯一の百貨店「岡島」前を走る山梨交通の路線バス(岡島百貨店は2023年に近隣に移転)。地形的制約もあり、幹線道路でも狭い道が多いため渋滞が多発する(画像:若杉優貴)
甲府市中心部、県内唯一の百貨店「岡島」前を走る山梨交通の路線バス(岡島百貨店は2023年に近隣に移転)。地形的制約もあり、幹線道路でも狭い道が多いため渋滞が多発する(画像:若杉優貴)

 山梨県の高校生にバイク通学が広まった理由のひとつに、県の諸事情で「3ない運動」が盛り上がらなかったことがある。3ない運動とは1980年代に始まった運動で、高校生にバイクの

・免許を取らせない
・乗せない
・買わせない

というものだ。この運動が盛り上がらなかった理由は、山梨県の

・地形的な制約
・それによる公共交通のカバーエリアの少なさ

による。

 山梨県は首都圏の西側にあり、山に囲まれている。高校の多くは

・盆地のなかにある「甲府エリア近郊」
・観光地として知られる「富士吉田エリア」近郊

に集まっており、社会人の勤務地も同エリアに多い。つまり、山梨県民の多くは毎朝「特定の地域」に向かっているのだ。

 また、山梨県の高校は全県1学区であるため、遠方に通学する生徒も多い。しかし、甲府市周辺に直接向かう鉄道は

・JR中央本線
・JR身延線

の2路線しかない。富士吉田市近郊には富士急行線しか通っていないため、鉄道空白地帯も多い。特に甲府盆地は、狭い盆地に市街地が広がっているため、地形の特性上、公共交通が発達しにくい。

 甲府盆地では、鉄道空白地帯を埋めるように路線バスが走っているが、その路線の多くは甲府市の中心部を経由する。狭い盆地ゆえ、甲府駅前(平和通り)など一部を除き、中心部の主要道路は片側1車線か2車線しかないところが多い。そのため、毎日のように渋滞が起き、バスは遅延する。

 さらに、甲府盆地の外郭や峡南地域などの中山間部では公共交通での通学は難しく、自転車での通学も地形的に難しい。甲府市中心部で頻発する交通渋滞を避けるために、小回りの利くバイク通学を選ぶ生徒が多いのも納得できるだろう。

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