自動車産業は本当に変われるか? 4月「パワハラ防止法」全面施行、トヨタ社員自殺・損賠訴訟から考える

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2022年4月1日から、中小企業においても「パワハラ防止法」が義務化される。パワハラは社会問題として昨今認識されるようになっているが、その目は当然自動車業界にも向けられている。

ブランドNo.1の「トヨタ」にも発生

トヨタ自動車のウェブサイト(画像:トヨタ自動車)
トヨタ自動車のウェブサイト(画像:トヨタ自動車)

 日本経済新聞は2022年2月25日、ブランディング会社のインターブランドジャパンが行った調査『Best Japan Brands 2022』の結果を報じた。この調査は、独自の評価手法を用いてブランドの持つ価値を金額換算してランキングにしたものだ。14年連続で1位になったのはトヨタ自動車だった。

 トヨタ自動車は世界最大の販売台数を誇る、日本を代表する会社だ。戦前から長く日本の産業をけん引してきた存在であり、ブランド価値ランキングで1位に選ばれても何ら不思議ではない。

 しかし一方で、トヨタ自動車は2010(平成22)年に自ら命を絶った社員の遺族から損害賠償を請求され、裁判で争ってきたことについても報じられている。そしてこのほど、過重な業務と上司によるパワハラが原因だったことを認めて和解に応じた。どんな会社でもパワハラ事件が起きてはならないが、ブランド価値No.1に選ばれるほどの会社でも起きていること自体は、もっと問題視される必要がある。

 トヨタ自動車は本当は悪い会社だ、という意味ではない。トヨタは日本が誇る素晴らしい会社だ。だからこそ、トヨタほどの会社であっても、社員を死に追い込んでしまうほどのパワハラが発生してしまう状況は、日本の職場が抱える異常性の象徴的事例のひとつとして問題視されるべきだ。

 清純な印象だったアイドルが覚せい剤所持で捕まるような事件が起きると、「まさかあの人が」という驚きの感情が生まれる。しかし、その後も同様の事件がいくつも起きるようになってくると、「まさか」が「またか」という感情へと変わる。そのように感情が変遷してしまうメカニズムは、「あの会社はブラックだ」という認識が、「どんな会社にもブラックな面はありうる」へと変わってしまうのと似ている。

 トヨタ自動車では2017年にも上司のパワハラが原因で社員が自ら命を絶っており、系列の販売店でも同様の事件が起きている。現状を見る限り、トヨタでさえ、パワハラ事件を起こしても世の中の認識が「まさか」ではなく「またか」になってしまっていると感じる。

 パワハラは、中小零細企業のワンマン社長だけが起こすものではない。誰もが知る大企業でも発生しているからこそ、ブラック企業や広告代理店の過労自殺事件は社会問題として認識されるようになった。

 また、業種や職種が限られる訳でもない。あらゆる業種の営業でも、経理でも、企画職でも、管理職でも起きている。今や日本では、どんな大企業であっても、どんな業種や職種でもパワハラが起こりうる。その状況こそが何よりも怖いことなのだ。

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