「降車ボタンを押したくない」 路線バスに寄せられた異次元クレーム! バス会社を悩ませる「お客さまの声」の中身とは

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路線バスの「お客さまの声」は主にクレームが多い。公開が少ない理由は制度的、物理的、予算的制約による。公開は、会社のサービス改善意欲の表れである。

新500円硬貨と現実問題

バスと硬貨(画像:写真AC)
バスと硬貨(画像:写真AC)

 三つめは、「新500円硬貨未対応」へのクレームだ。

 高度に精算行為の自動化が進んだ今となっては、新紙幣や新硬貨への対応に頭を悩ませるのは、交通事業者だけではないのかもしれない。

 以前、現行の紙幣切り替え時に両替機を更新できないバス会社があったが、間もなく倒産したのは記憶に新しい。経営体力のない中小のバス事業者にとっては、新紙幣や新硬貨は脅威でしかないのかもしれない。

 新500円硬貨は、2021年11月に発行が始まったばかりであり、なかには7月3日からスタートする新紙幣とあわせて対応する事業者もあるだろう。足立区のように、バス路線の維持を目的にバス事業者の負担軽減に向けて補助金を設ける自治体もあるだろうが、全ての中小のバス事業者に補助するとなると“無理ゲー”に近い。

 ICカードなどのキャッシュレス決済は、両替機更新問題を解決するひとつの解であり、国土交通省はキャッシュレス決済に限定した運行も認める方針だ。とはいえ、キャッシュレス決済も、その種類によっては機器更新という新たな負担も生じる。

 直近では、熊本県内で路線バスや鉄道を運行する五つの事業者が、機器を更新するコスト負担からスイカといった全国交通系ICカードを年内にも廃止することで話題となった。広島県の交通系ICカードPASPYも、機器の更新に多額の投資が必要でシステムの維持が困難になったためサービスを終了することとなった。

 今現在は紙幣や硬貨が淘汰(とうた)される前の過渡期であり、両替機とキャッシュレス決済の実装を中小のバス事業者に強いる過酷な時代ともいえなくもない。50年後、100年後には

「その昔はバスに現金で乗っていた」

という昔話となるだろう。

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