「足立区 = ヤバい地域」なんて、まだ本気で思ってるの? 改善データを見れば一目瞭然、あの“人気バラエティー番組”の功罪と現実

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足立区はメディアでいいはやされるような「ヤバい地域」ではない。20年間で犯罪件数は78%減少し、特に侵入窃盗などは90%以上の大幅な減少を遂げている。この変化は、区政の強力な治安対策と、住民との協力によるものだ。しかし、メディアのステレオタイプ報道が未だに根強く残る現状もあり、区の実際の姿を正確に伝える必要がある。

近藤区政の治安改革

割れた窓(画像:写真AC)
割れた窓(画像:写真AC)

 では、足立区の治安が大幅に改善した理由はなにか。この経緯を解説していこう。

 2007(平成19)年7月、足立区が貧困の代名詞として盛んにネタにされていた頃、元都議会議員の近藤やよい氏が新区長に就任した。以来、近藤区政は強力な治安対策を実施してきた。治安対策の基本は「割れ窓理論」である。

 割れ窓理論とは、割れた窓ガラスや軽犯罪を放置すると、やがて街全体が荒れ、治安が悪化するという考え方だ。つまり、街をきれいにして軽微な犯罪を見逃さずに取り締まることが、凶悪犯罪の芽を摘むことにつながるというのだ。

 この理論は、1990年代にニューヨーク市の治安対策で採用され、大きな成果を上げたことで知られる。ニューヨークでは、落書きの消去や街頭の清掃、防犯パトロールの強化などの地道な取り組みを通じて、犯罪の発生を抑制されたとしている。

 もちろん、この理論には批判もある。都内では、割れ窓理論に基づく「排除アート」の横行が問題視されることもある。しかし、足立区では、この理論に基づく対策を積極的に導入し、一定の成果を上げている。

 特に力を入れたのが、自転車盗対策だ。2008年に始まった「ワン・チャリ・ツー・ロック運動」では、1台の自転車にふたつの鍵を付けることを推進した。これは、二重ロックの自転車は、自転車を盗もうとする人に対して手間やプレッシャーを与えるため、被害抑止に一定の効果があるという考えに基づいたものだ。

 さらに、対策においては多方面との協働が実施された。2010年の「区治安再生アクションプログラム」では、警察が自転車盗の多発地域の情報を区に提供し、区が該当する町会に啓発看板を設置するなどの対策を講じた。

 さらに、自転車盗の発生原因となる放置自転車や違法駐輪の対策も進められた。民間事業者とも協力し、2010年3月には、綾瀬駅周辺の民間駐輪場13か所で2時間までの無料開放が実施されている(『東京新聞』2010年3月26日付朝刊)。

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